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……ぜ、絶対に見つからないように気を付けよう。
クビになりたくないもん。
無能スキル持ちだから、せっかく見つけた仕事を失いたくないっていう感情じゃない。
前ならそう思ったかもしれない。
でも、今は違う。
サージスさんとシャルと一緒に居たい。
だから、ばれないようにしなくちゃ。
ジャパニーズアイでいろいろ見えることもばれないようにしないと。
謎スキルの謎文字を信じて、ハズレドロップ品を実験的に食べさせたのかって怒られちゃう。
いや、怒られるだけならいいけど。あきれられて、パーティーをクビになって、それから、S級冒険者にひどいことをしたって、街を追放されちゃうかもしれない。
そうしたら、パーティーを追い出されるだけじゃなくて、もう、2度と会うこともできなくなっちゃうんだ。
幸い、本を読んで知ったと思ってもらえてるようだから……。
だ、大丈夫だよね。ジャパニーズアイは目が黒くなるだけだって思われてるし。
「んー、どうする、リオ?王都に先に戻るか、合流するか。王都は王都でまだアレがうじゃうじゃしててめんどくさそうだしな……」
シャルが振り返った。
「あ、え、っと」
王都に戻るかサージスさんのところへ行くか?
「サージスさんと、合流したいです。あの、一緒の、パーティーだから……」
私の言葉にシャルが複雑な顔をした。
「あー、そうか。ボクはサージスさんとパーティー組んでたけど仕事以外は一緒にいなかったから。そうか。パーティーなら普通は一緒に行動するか……」
あ、そういえば初めてシャルと合った時も、サージスさんが呼んで仕事って聞いてた。
「あの、シャルが一人でいたいなら、えっと、王都でも……僕はギルドかどこかに行っていますから」
まだ餓鬼さんがいれば食べ物を配るの手伝おう。ああでも、あの子たちが頑張ってくれてるなら、僕は千年草の仕分けとかのお手伝いしたほうがいいのかな?
むぎゅっつ。
シャルに鼻をつままれる。
「リオ、何?ボクと一緒に居たくないわけ?」
え?
「い、いえ、あの、シャルが嫌じゃなきゃ、一緒に居たいですっ」
一緒にいさせてくれるなら。
「ふん、仕方がないね。リオがそういうなら、一緒のパーティーだし、一緒にいないとね」
シャルの手が私に触れたかと思うと、目の前にはサージスさんがいた。
座り込んで頭を垂れている。
「サ、サージスさんっ大丈夫ですか?」
周りに立派なローブに身を包んだ人が2人いた。白髪に、白いおひげの人だ。
「リオちゃん、大丈夫よ。優秀な王宮お抱えの治癒スキル持ちがすでに治療済みだから」