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「まさか、灰をかき分けて、食べられるものが無いか探したの?」
へ?
「森の中ならいざ知らず、紅蓮魔女が灰にした場所に食べられるものなんてあるわけないでしょ」
ああ、そうか。
地面の下にだって、自然薯とか食べ物がある可能性があるよね。
【セイヨウショウロ:高級きのこ。食用】
食べ物がないかと意識して地面を見渡すと、文字が現れた。
あった!あるよ!
地面が現れた場所に、駆け寄り、手で灰をかきわけ、文字の表示された場所の土を掘る。
「……え?」
黒焦げになったのか、それとも、もともとこういう色?
地面からぽろんと出てきた丸っぽいかたちの塊。
「ちょ、なに、それ、糞じゃん。何してるのっ!ってか、紅蓮魔女のスキルでも燃え残った糞って何?」
シャルが私の手をぱんっとはたいて、きのこを手から落とした。
あー、うん。やっぱり、糞に見えるよね。
片目をつむって、ジャパニーズアイを2重にしてころころと転がっていった糞みたいなものを見る。
【セイヨウショウロ:通称黒トリュフ。最高級の食用きのこ。加熱されてより香りがよくなっている状態】
さ、最高級の食用きのこ!
香りがよいと言えば、さっきからこの食欲をそそる香りは……あのきのこが原因なんだ。
セイヨウショ……なんだっけ、えっと、通称、黒トリュフだったっけ。
「あー、ちょっと寝たから魔力回復した。けど、1回しか飛べないから、どうしようかな、サージスさんたちはまだあの辺にいるんだろうな」
シャルが、般蛇とサージスさんとガルモさんが戦っていた付近に視線を向けた。
い、いまだ!
シャルがさっき私の手からはじいて飛ばしたセイヨ……えっと、最高級きのこを手にとり見つからないうちに鞄の中に入れる。
……あー、うん。大丈夫。糞……みたいな見た目だったけど、きのこらしいから。
あ、何が大丈夫なんだろう。だんだんなんか感覚がおかしくなってきちゃった。
シャルが私の手から弾き飛ばしたってことは、やっぱり忌避感がある品ってことだよね。
あー……でも、高級じゃなくて、最高級……。今までジャパニーズアイで示された物はどれもおいしかった……。
ひ、一人で食べれば大丈夫じゃないかな?
うん、一人で食べるなら。でも、見つかったら?
おまえ、糞食ってんのか!って言われておしまいだ。S級冒険者のサージス様に何を食べさせたの?とかシャルに言われたりしないよね。
っていうか、馬鹿なの?あほなの?何考えてるの?一緒のパーティーとかありえないから、クビだから!って、言われるよね。
でました。トリュフ。黒トリュフ。
いや、あぁ、あれも独特の形よの。
<(_ _)>