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「お呼びだそうで。概要は聞いたわ。サージスでも歯が立たない化け物が出たのですって?火魔法なら何とかなりそうだと」
将軍がシェリーヌ様の言葉に頷く。
「その通りだ。すぐに行ってスキルを発動してもらえるか?」
「分かったわ。チャンスは1度きりよ?私のスキルは最低でも2年間を置かないと発動のための魔力が溜まらない。それでも私の力が必要なのね?」
2年に1度しか発動できないスキルを使うところまで追い込まれているという話っていうことだよね。
「これが、厄災なのかしら?」
シェリーヌ様のつぶやきにかぶさるようにシャルの言葉が飛ぶ。
「僕の転移スキル、あと2回だから。サージスさんの元にシェリーヌを送り届けて、戻って来る分しかないからね?」
「ああ、助かった頼む」
「サージスさんの元に今からシェリーヌと行くから、5秒で安全確保してよ」
シャルが、腕輪の石に手を触れ、サージスさんに話かけた。
「了解」
サージスさんの返事と同時に、シャルが私の手を放した。
え?置いていかれるの? シェリーヌ様と行くって、私は?
思わずとっさにシャルの腕をつかむ。
ひゅんっと、その瞬間視界が代わる。サージスさんが目の前にいて視界の端に、般蛇の姿が映る。
「なんとか、街へ移動を阻止するのがやっとだ……」
ひゅっと、肺から変な風に息が出た。
これが、サージスさんの戦場。
あちこちに血まみれで倒れこむ兵たち。
その数は100はいるだろうか。
ガルモさんが、般蛇の尾の先、蛇の胴体を脇に挟み込むように持って引っ張っているのが見える。
「街にはいかせないでごわす」
「あー、もう、しつこいわねぇ!邪魔よ、邪魔!私は、世界中の男どもを根絶やしにしてやるんだから。憎い、憎い男ども。そうして、世界中の女たちを醜い姿にしてやるわ!恨めしい、恨めしい女ども」
叫んだ般蛇の目がさらにつりあがり、目が真っ赤に光った。そして、あまたに生えている角がぎゅんっと伸び、顔の2倍ほどの長さになる。
木の上から体が飛び出すほどの巨体だ。角の長さだけでも大人の身長はありそうだ。長い黒髪を振り乱しながら、体を折り曲げた。長く伸びた角が、ガルモさんの体をかすめる。
ぱぁっと血が飛び散ってもなお、ガルモさんは蛇の尾を脇に抱えたまま離さなかった。
「街には……街には……行かせないでごわ……」
【脇固め:別名逆とったり。相撲の決まり手だが、禁じ手である】
また訳の分からない文字がガルモさんに表示される。
相撲って何?
禁じ手?
禁じ手って使っちゃ駄目なの?
大丈夫なの?ガルモさん……。どくどくと額から、腕から、血が流れ出ている。
2月も今日で終わりですね。ふぅ。
来月もよろしくね!