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「え?あ、僕?そ、そりゃ、紅蓮魔女と呼ばれるシェリーヌ様にはお会いしたいけれど、こんな時に会いたいなんて我儘言わないよ?」
シャルが私の頬っぺたをぶにーと引っ張った。
「こんなときだから、リオと離れる気はない。スキル回数残り少ないんだからね。リオに助けを呼ばれても駆けつけられなかったら一生後悔する」
シャルがぎゅっと私の手を握ると、しゅんっと視界が代わる。
塔の上から見える一番遠くの街道沿いの影に飛んだみたいだ。
大きな荷物を背負ったり馬車に荷物を満載して王都から逃げ出した人たちが列をなして移動している。
そんな景色が目に飛び込んだのは一瞬で、すぐに視界が切り替わる。
シャルがまた飛んだんだ。
今度は人々の姿はまばらだ。たった2回飛んだだけなのに、ずいぶん王都から離れたのだろう。
3回目で1つ目の街を通過。
なるべく距離を稼ぐためにと、見張り台のようなところに登ってから4回目を飛ぶ。
3つ目の街ではギルドに寄った。
紅蓮魔女がどこまで4つ目の街から移動しているのかを確認するためだ。ギルドには様々な依頼をこなすためにいろいろなスキルを持った人たちがいる。
お城と連絡が取るための手段も当然ある。
シャルがギルドスタッフと話をしている間、何か丸いものをぐるぐると回している人に気が付いた。
「なんですか?それ?」
【マニ車:1週回すと般若心経を1回唱えたことになる】
マニ車?
確かに馬車のタイヤのようにくるくる回るけれど……。
大きさとしては、両手で持てる。何かたくさんの模様が彫られていて、タイヤという感じはしない。
それに……般若心経……って、般蛇に、般若の文字があった。あれとかかわりのある物?
「何って言われてもなぁ。ドロップ品だから持ってきたが、鑑定してもらっても無表示で、価値が無いって言われたんだが、回していると心が落ち着くような気がするから持ってただけで」
「鑑定してもらって、価値が無いって言われたんですか?でも、ドロップ品ならレアドロップ品です、あの、レアドロップ品なら金貨5枚はします。それで、えっと、今からレアドロップ品を収集している方に会いに行くので、えーっと、僕に売ってください、あ、金貨5枚じゃ売れないというなら、その」
男の人が驚いた顔を見せる。
「何?これ、金貨5枚もするのか?教えてくれてありがとうな、売るよ」
ほっ。よかった。もっと高くなったらどうしようと思った。
「何?リオ、こんなの欲しいの?いいよ。僕がプレゼントする」
シャルがひょいっとマニ車を持ち上げ、金貨を5枚男に渡した。
いつもご覧いただきありがとうございます。
前にも言いましたが、更新ペースは、日、水、金です。あれ、日火金のがいいかな……?
うーん、もうちょっと考えよう。