16話
「分からない?失礼ですが、お客様は、パーティーの中ではどんな役割を?何系のスキルをお持ちで、どのような戦闘スタイルでしょうか?」
「僕は、その、荷運者で、戦闘員ではなくて……なので……」
「で、どのようなスキルをお持ちで?鑑定系ですか?それとも剛力系?それともドロップ率がアップするような幸運系と呼ばれるものですか?」
スキルによって、防具選びは変わるの?
言わなくちゃ駄目なのかな……?
「と、特に……荷運者として特になるスキルは持ってなくて……」
小さな声でぼそりと答えると、途端に店員の顔から作り笑顔が消えた。
「ああ、冒険者でもなく荷運者で、荷運者として有利なスキルもないということは、無能スキル持ちですか?」
ドキリと心臓が跳ね上がる。
「そうですね、本来無能スキル持ちに売るような品など当店では扱っていないんですけれど、今ならちょうどいい品がありますよ」
店員が、変な形の兜を取り出した。
カブトムシの角みたいに1か所突き出た部分がある
「ほら、お客様にサイズがぴったりですよ」
と、店員が私の頭の上に、銀色の兜をかぶせた。
ぴったりというほどジャストフィットではないけれど、大きな頭の人には確かにはまらないだろうなぁ。
「ぷっ」
店内にいた冒険者がこちらを見て笑っている。
「これでも一応、ダンジョンのドロップ品ですから、それなりに価値のある物です」
ああそうか。
鍛冶スキルがある人が作った武具や防具じゃなくて、ドロップした防具なんだ。
だから、変な形なんだ。カブトムシみたいな形のモンスターからのドロップ品かな?
私が知っている限りではこんなドロップ品は知らないから、めちゃくちゃレアなドロップ品なのかもしれない。
下手したらユニークアイテムと言われるすごい品……?
「あの、おいくらですか?」
ユニークアイテムだとすれば、金貨2枚程度じゃとても手が届かないのは分かってるんだけれど。
「ぷっ。あいつ、値段聞いてるぞ」
店内にいる冒険者たちの笑い声が大きくなる。
「いくら防具についての知識がないからって、おかしいって思わないのかよ。さすが無能スキル持ち。くくくっ」
確かに私は、防具についての知識はない。というか、そうか。勉強してから買いに来るべきだったかも。
……笑われて当然だよね。
「そうですねぇ、ダンジョンドロップ品の兜となりますと、本来金貨4枚からのお取引となりますが……なにぶん、サイズやデザインなど好まれる冒険者が少ないもので、特別に金貨1枚のお値段でご紹介させていただいております」