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「お腹がすいて死んじゃったの?じゃぁ、ママなの?」
男の子が餓鬼の一人に目を向け、兄の手からリンゴを採ると、近くの餓鬼に向かって走って行った。
「食べてくだしゃい。僕もお腹ちゅいてるけど、ママにあげましゅ」
「おい、近づくと危ないぞ!」
兵が男の子に声をかけた。すぐに餓鬼の首をはねられるように剣を構える。
でも、私の目には男の子の持つリンゴに【施餓鬼】という文字が見える。大丈夫だ。
ぽんっと音がして、ふわりと男の子の頭にいちまい花びらが舞い落ちた。
薄桃色の綺麗な花びら。【蓮の花びら】
「ありぇ?」
男の子が戻ってくると、持っていたリンゴが半分になっていた。【おさがり】の文字が見える。ん?初めての文字だ。
【ジャパニーズアイ発動:二重】【ジャパニーズアイ発動:三重】
「ママが半分こしてえた。お兄ちゃんどうぞ」
男の子がリンゴを少年に差し出す。
「いいんだ、お前が食べろ。俺は……」
手に持っていたリンゴをもって少年が立ち上がり、近づいてくる餓鬼に差し出した。
「食べてくれ。俺は、まだ死ぬほどお腹が空いてるわけじゃない。ごめんな。横取りしようとして……」
ぽんっと、餓鬼が消え、そして、リンゴが半分残った。【おさがり:いただけば供養やご利益につながる】
「なんだ?半分でいいのか?もっと食えばいいのに」
どうしよう。なんか胸が詰まって泣きそうだ。なんて皆優しいんだろう。
「半分こしてくれたんだね。君が食べていいんだよ……。食べたら、他の餓鬼たちにも、食べていいよと言ってくれる?」
街の人たちが少年と男の子の行動を驚いて見ている。
「街の人たちが、準備してくれたのよ。餓鬼たちのために……食べていいって教えてあげて」
少年が大きく頷いた。男の子も真似して頷く。
「ここにある食べ物は、皆に食べてもいいって用意してくれたんだって。いっぱい食べてくれ」
「食べてね。あのね、それから、えっと、半分こしてくれた子にありがとういってくだしゃい」
ぽんぽんぽんと次々に音が聞こえ、はらはらと花びらが舞う。そして、テーブルには半分になったパンや干し肉や果物が残っている。
「お、お前たち、すごいな」
街の人たちが少年の頭をなぜた。
「すっかりこのあたりの化け物が姿を消した。助かったよ」
「半分ずつ残すなんて、アイツらも律儀だねぇ」
「仲良く分け合って食べろってことか?半分残った分は皆で食べるか?」
「調理した料理も持ってくるか。もうこの際だ、祭りだと思って半分の食べ物食べようぜ」
「ほら、お前らも遠慮せず食えよ」
街の人たちが危険が去ったことでほっとしたのか、途端に明るい声を出す。そして、男の子と少年に食べ物を勧めたり、半分になった食べ物を口にいれたりし始めた。
すでに家から酒瓶を持ちだして飲み始めている人たちもいる。
泣き回さ。
読み返して泣いたとまと。
さて、お知らせー。別作品になりますが
「カフェオレはエリクサー」の漫画連載が始まりました。コミックブーストにて。
また、引き続き
「ハズレポーションが醤油」もガウガウモンスターなどで好評連載中、5巻が5月にでるそうな
「魔欠落者の収納魔法」もガウガウモンスターなどで好評連載中、
そして、「ハズレポーションが醤油」がコミックシーモア公式わちゃちゃんねるにて紹介されます。
詳しくは活動報告にて。
あと、小説家になろう未掲載作品「下級巫女」も全2巻で好評発売中となっております。
おっとついでにアルファポリスのみ掲載短編をちょいと上げてあります。婚約破棄×2つ
たまには宣伝でした。うむ。
さて、続いて、更新ペースを少し上げます。週2から週3に。
日水金の3回……カフェエリが月木更新なんでずらした。
次回は明日更新しまーす。今から予約しなくちゃ!
ではでは!
あ、そうだ!
感想ありがあとうございます!
ちょっと感想返しが滞っていてごめんなさい!
とても感想を楽しみにしております。
リオの活躍をこれからもよろしくお願いします。
まぁ、本人は、活躍したなんて思ってないんだけどね……。