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部屋の中からシャルの声が聞こえてきた。
「大丈夫だと思います。木の実でも大丈夫だったから」
「そう、じゃぁ、陛下、ちょっとその器持って付き合ってもらえますか?」
シャルの言葉に頭が混乱。
いま、シャルが陛下って言った。
やっぱり、この部屋には陛下が。この国の王様が、一番偉い人が。
うわーーっ。ど、ど、どうしよう。
「陛下!騙されてはなりませぬ、そいつは極悪人です」
左右を騎士に支えられるようにして立ち上がった宰相が、部屋の中から顔を出したシャルと、シャルの背後に立つ40前後の恰幅の良い男性に向けて叫ぶ。
「リオ、僕につかまって」
シャルが、右手でその恰幅の良い、仕立ての良い豪華な服装に実を包んだ男の手をつかむ。
陛下……なの?この人が、陛下なの?
「陛下、一刻も早くこの不届き者を牢屋へと」
宰相の言葉に、陛下が首を横に振った。
あー、やっぱり、陛下だよ、この人が!うわー、すごい、一生会うことがない雲の上の人が今、目の前にいるっ!
「何を言っている。この緊急事態にギルドとの関係を悪化させるようなことはできぬ。シャル君はギルドが特別に派遣してくれた人間だ。分かっているだろう?」
宰相がぎっと、シャルをにらみつけた。
シャルはそんな宰相の腕を左手でつかむ。
「陛下、宰相は、僕とリオを牢屋にぶち込むとも、国外追放するとも言いました」
びゅんっと飛びながらシャルが陛下に話しかける。
飛んだ場所は、兵たちが必死に餓鬼たちの侵入を拒んでいる3つ目の塀のすぐ近くだ。
「陛下!なぜこのような場所に?」
「お戻りください!危険です!」
すぐに兵の何人かが私たちに気が付いて慌てて護衛のために周りを取り囲む。
「陛下に運ばせてしまい申し訳ありませんでした。こちらにお連れしたのは、説明するよりもお見せしたほうが早いと思ったからです。ご覧ください」
シャルが私に陛下が持っていたナッツの入った器を手渡した。
うー、そうだよ。確かに私、シャルに説明するより見た方が早いって言った。
でも、それはシャルにっていう意味だよ。
まさか、まさか……陛下にも見てもらった方が早いとか、そんなことになるなんて……ど、どうしたらいいの。
って、どうしたらいいのって話でもない。
と、すぐに思いいたる。
塀の穴から、餓鬼が4体姿を現した。それに気が付いた兵たちが、剣を振り上げる。
「ま、待って、待って」
首を切り落とすつもりだ。
陛下を守るために私たちの周りにいる兵の隙間を通り抜け、餓鬼の前に出る。
「危ないぞっ!それとも、火魔法スキル持ちか?なら、頭を狙え」
兵の一人が声を上げる。
器の中からナッツを少し手に取り前に差し出す。
クリスマスイブですねー。
サンタさんは来ますか?
ところで、私が子供のころには、とまと家ではクリスマスは、ながぐつに入ったお菓子がもらえる日って感じでした。
小学校低学年までかな。お菓子もらってて、それ以降は、特に何もなしでした。
サンタ来なかったなー笑。
だって、幼稚園のころから、弟とくすくす笑いながら寝たふりして、親が長靴のお菓子置いて行ったら布団から飛び出てたっていうのを覚えてるから。
サンタって、信じてないところには来ないじゃん?