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「えーっと、その、ガルモさんとサージスさんが言うには、浄化魔法かなにかみたいなものじゃないかと?なんか、人の食べ物が餓鬼を浄化してるんじゃないかって……」
「あーーーっ、こんな大事な話っ!」
シャルがガリガリと頭をかいた。
「リオ、リオがくだらない理由……サージスさんにおいしいご飯をお腹いっぱい食べさせたいとかいう、どうでもいい理由で食べるものを用意してくれって頼むわけない……のに、疑った。この緊急事態に、食べ物をみんなに食べさせたいとか思ってるのかって、僕は、心のどこかで疑っていた。ああ、もう、本当に、僕は自分が嫌になるっ」
違う、シャルが悪いんじゃない。私がちゃんと説明しなかったから。ガルモさんにシャルに甘えているという言葉を思い出す。本当にそう。
理由なんて説明しなくても、頼んだらやってくれるんじゃないかってきっと、心のどこかに甘えがある。だから、だから……ごめんなさい。
シャルの背後から餓鬼が近づいて来た。
「危ない、シャル、右後ろからきてる」
シャルが、私の手の上にのるクッキーを1枚手に取る。
「ほら、クッキー食べてさっさと消えて」
シャルの手のクッキーは消えない。
「……あれ?サージスさんも1回成功したけれど、あとは失敗していたけれど。なんでだろう?」
首をかしげる。食べ物は同じものを差し出してるのに。
手が、シャルに伸びた。危ない。
「食べていいんだよ。だからシャルを傷つけないでね」
と言うと、シャルの手のクッキーが消えて、ぽんっと餓鬼が姿を消す。
「リオ、じゃぁ、城に行くぞ」
は?
え?
ぱっと視界が変わる。目に見える場所の影かマーキングした場所にしか飛べないので、シャルは城の棟に飛んだ。
高い塔の上からは、城の敷地を見下ろすことができる。敵の侵入を防ぐためか、街から見える城を囲んだ塀の内側に、一回り小さな塀、それから水の張られた堀があり、さらに塀があった。一番内側の塀の中には餓鬼の姿は見えないけれど、あちこち塀が黒焦げになって穴が開いている。
兵たちが必死に侵入を防いでいる。
「ほら、行くよ」
塔の中に入ると、物々しく多くの騎士が一つの扉を守っていた。
「誰だ!どうやってここに来た!」
槍をバツにするように、行く手を騎士に阻まれる。
「もう、ちょっと中にシャルが戻ったって伝えてくれる?」
シャルが不機嫌な表情で騎士の一人に告げる。
「シャル、様ですか?少々お待ちを!」
「あ、名前は知ってたみたい」
ふぅっとシャルが小さく息を吐きだす。
お城の、塔の、物々しい警護されてる場所の……。
まさか……。
追放劇のあった翌日には、お城に来てる……
っていうか、ちょっと日にちがたたなさすぎててどうしよう……