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「お願い。シャルなら、危険だと判断すればすぐに逃げられるでしょう?」
真剣な目でお願いする。
「僕はシャルを信じている。シャルも僕を信じて。必要なことなの。口で説明するのは難しい。ううん、説明できないこともないけれど、信じてもらえるか分からない、不思議なことなの。だから、実際に見てほしい」
「見る?何を?」
「それから、シャルの言葉ならば……陛下の護衛も頼まれるような信用されているシャルの言葉なら、ギルドの人も話を聞いてくれるでしょう?」
食べ物を用意してほしいという言葉。すでに伝わっていると思う。
それでも、どれほど必要なことだと思われているのか。優先順位は、まず餓鬼から逃れること、餓鬼を倒すこと、食べ物を用意するのは事態がある程度落ち着いてからと思われていたら……。
「何を言っているの、リオの言葉だって聞いてもらえるよ」
私の話が聞いてもらえるかもしれないけれど。それでも優先順位が上がるとは思えない。
サージスさんのパーティーの荷運者だって言ったって、緊急事態なのだと後回しにされそうだ。
「シャルが見て、そして伝えてほしい。なんならお城の人に……って、あれ?お城の人……大丈夫なの?早く帰らないと怒られる?あれ?え?そうだ、ごめん、あそこに連れてってとかお願いしてる場合じゃない」
シャルが私の握っている手とは別の手を私の背中に回した。
「リオの願いをすべてかなえてあげられるくらい大きな男になれたらいいのに。ごめん」
飛んだ。
「リオ、あいつらの手が伸びたらすぐに飛ぶ。行きたくなくても城に行ってもらう」
部屋の窓から見た、あそこに行きたいと言った街の中にいた。
「ありがとう、シャル、大丈夫。見ていて」
餓鬼が3……人、いや、匹?えーっと、3体、ガルルとうなりながら近づいて来た。
ああ、文字が見えない。スキルが切れてる。だけど、分かる。街の中の餓鬼たちも同じでしょう?
「食べていいよ」
ハンカチを開いて包まれていたたクッキーを差し出す。
「は?ちょっと、何してるのリオ!」
シャルは周りを警戒しながら私のウエストに腕を回している。すぐに私を抱えて飛べるようにだろう。
ハンカチの上に載っていたクッキーが一つ消える。
ぽんっと、音がしてふわりと花の香りを残して餓鬼が1体消えた。
「え?」
一番近くにいた目の前の餓鬼が消えてシャルが目を丸くしている。
「どうぞ、美味しいクッキーだよ、食べて」
別の餓鬼に差し出す。
また1枚クッキーが消え、そしてぽんっと餓鬼が消えた。
「な、なんなの?一体、ちょっと、リオ、何してるの?不思議なことって、これ?ちょ、不思議すぎっていうか、何なの?」
何と言われても。
そうそう、あとがきに書こうと思っていて忘れてた。
蓮の花がイメージなのでぽんっ。です。
なんか、ぽんっって音がして花が開くんですってね。早朝4時くらいで静かに待機してると聞けることもあるとかなんかで見た。