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「なんだ?いったい誰からの連絡だ?」
「シャル、王宮の周りにもやつらが押し寄せている。いつでも逃げられるように余計なことをするな」
小さな音で声が届く。何やらもめているようだ。でも、やめない。
陛下の護衛をしているのは私は知らない。
聞かされてない。だから、失礼なことをしたことにならない。
……って、いうことにならないかな。
巨大な鬼に視線を向ける。
小さな文字が浮かんでいる。いいや、文字が小さいのではない。距離がありすぎて小さくしか見えないのだ。
なんて書いてあるの。もっと大きな文字で見せて。
と念じたら、思いが通じたのか。いや、違う。
単に動いたのだ。大きな鬼が。木がいくつもなぎ倒されていく。
「いそげシャル」
【般若の面:嫉妬や恨みで鬼となった女の面】
般若の面?
ぞくりと背中が冷たくなる。なんだろう、鬼でも、餓鬼の時には感じなかった恐怖を感じる。
『!%?>+*}{`!~#=&(#~|"=&』
唸り声や鳴き声ではない。意味は分からないけれど、何かを鬼がつぶやいた。
【わらわを捨てた男など亡ぶがよい】
ミシミシと、木が倒れる音。
次の瞬間、サージスさんが飛び上がった。
ガルモさんが鉞で飛んできた巨木をはじき返す。
飛び上がったサージスさんは、巨木を飛ばした蛇のしっぽに剣を振り下ろしている。
「蛇のモンスターか!引きずるような音はこれか!」
サージスさんが剣を何度も同じ場所に振り下ろしているが、よほど固いのか小さな傷しかつけられないようだ。
「うわっ」
グネグネっとうねってサージスさんは巨大な蛇の尻尾にはじかれて飛んでいく。
「大丈夫でごわすか」
ガルモさんが岩に激突する前にサージスさんの体を支えた。
「おう、すまん。助かった」
ぞくぞくと体の震えが止まらない。でも、目の前の鬼から目を離さない。
ほかに何か、情報はないの?ジャパニーズアイ、何か……。
【般蛇:般若の―――】
「うわ、何コレ、リオ、行くよ!」
シャルの声がしたかと思えば、瞬きした瞬間に別の場所にいた。
「あら?シャル、戻ってきたの?外は物騒よ。あ、こんにちは。また会ったわね」
綺麗な女性のいる場所だ。
「マーキングしてある場所がここだから来ただけ、行くよリオ!」
シャルは私の手をつかんだまま窓を開いて外に視線を向ける。
どうやらここは建物の2階らしい。下を見下ろせば、街の様子が目に飛び込んできた。
逃げまどう人と、餓鬼の姿だ。家の中に人は逃げ込み固くドアを閉じる。
だけれど、餓鬼たちはその手でドアを触れることで、ドアを消し炭にしてしまう。人々は、別の場所へと必死に逃げようとしている。
兵たちが餓鬼たちの首を落として時間を稼いでいるけれど、餓鬼の数は相当なもので……。
いつもありがとうございます。
鬼について調べている時に、
「般蛇」というのが出てきました。
うむ、これにしようと思って、書き進め、再び般蛇の詳細を確認しようと検索したら……
出てこない。情報が!
どういうことなのか、忽然と、般蛇は無かったことになっているのです。
えー、どうして?!
ってことが起きました……ぐすん。
なんでなのぉタスケテー!