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私の知識は魔法に疎い。強いモンスターたちの知識も乏しい。何かを闇に落として支配するような力を持つ高位モンスターのことは全く分からない。つまり、話にはいれない。
勉強不足すぎる。自分の入るダンジョンに関係するモンスター以外ももっと勉強しておかないと。
うー。王都に戻ったら本をたくさん読まなくちゃ。神殿に通って神父さんに教えを請わなくちゃ。
王都の神父さんはどういう方なのだろう。
と、今はそれよりも。
「そろそろ煮えたかな?」
【牡丹汁:具が少ないため鍋とは呼べない】
ん?鍋ってだから、料理するための調理器具じゃなくて、料理名なの?具がたくさんだと鍋?具が少ないと汁?
なんだっていいや。
「どうぞ、食べてね」
【施餓鬼】
器に次々とついでいく。ちょっと行儀が悪いんだけど、もう木の実で作った器を地面に並べたまま。そこに雪平鍋ですくった牡丹汁をつぎ分けていく。ちょっとこぼしちゃうけれど、この方が早い。
並んでいる実の器は30ほどだろうか。すぐに空になりぽんぽんと音が聞こえる。
「おいしい?」
顔をあげると、餓鬼頭さんだけじゃなくて、餓鬼さんの姿もたくさん見える。
ガルモさんとサージスさんが感心しながら私を見ている。
「な、リオはすごいだろ?」
「浄化料理スキルでも持っているのか?」
話は終わったんですかね?
「あのー、薪とそれから肉を焼くのをお願いしても……あと、見つけられるなら自然薯とかきのことかなんかお願いしてもいいですか」
ガルモさんとサージスさんに声をかける。
「あ、ああ、分かった」
「とはいえ、リオ、そいつの手に触れられたら危険だからな、気を付けろ」
あ、そうだった。あまりに無害すぎて危機感なかった。
二人が薪と肉や食材を補充してくれるおかげで、私は次々にどうぞと差し出すだけでよくなってしまう。
「紅蓮の魔女の出番なくなりそうだな」
サージスさんが木に刺した肉を火の周りに刺しながらぼそりとつぶやく。
「火魔法スキルで山を焼くより浄化したほうが被害は少ないだろうな」
ガルモさんが乾いた倒木を持ってきて、鉞で薪割をしながら頷いた。
あれだけ大量にいた餓鬼たちの姿はまばらになり、時折山からふらふらと下りてくるくらいになった。
山の中腹あたりで上がっていた煙も、徐々に落ち着いているので、餓鬼たちは何らかの情報伝達方法で、ここにご飯があるよーと伝わって集まってきていたのかもしれない。
ズルズルズル。
「何の音だ?」
サージスさんが剣を手に取り立ち上がる。
周りへ神経をとがらせて警戒した。
ズルズル。
何か重たい物を地面で引きずるような音だ。
次のやつ出て来るぅ
今度はどんな奴かなぁ?