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サージスさんが鹿を解体してる間に、肉をどんどん焼いていく。
サージスさんの解体作業は雑。なんだかまだ食べられそうなところが皮や骨にたくさんついたまま、ざっくり肉の塊を取り出す。
雑だけれど、その分とても速い。
うーん、もったいない。あの皮や骨に付いた肉……って、時間がある時は丁寧に解体してもらおう。
空になった鍋に、鹿の肉と水としいたけと自然薯を入れ、サージスさんが薪を集めに行っているすきに味噌投入。
【紅葉鍋】
ん?ちゃんこ鍋から、紅葉鍋になった。何が違うんだろう?というか、紅葉って葉っぱのことじゃなかったっけ?
葉っぱなんて入れてないよ?
こちらの様子をうかがう大量の餓鬼頭さん……。ああ、また数が増えてる。100近い?
「大丈夫かリオ」
ガルモさんが駆けてきた。
「あっちに出るやつは数が減ってきたが……この頭は、首を落としたやつか?体の方は消滅していっているから、頭から体が再生していくのか?」
サージスさんが戻ってきた。両手に大量の薪を抱えて。集めるの早いなぁ
「おい、ガルモ、こいつらの体が消滅しているって?」
「ああ」
サージスさんが首を傾げた。
「おかしいな、上ではそんなことなかったが……」
そうだ!これがあった。
まだ料理が出来上がるまでには時間がかかる。で、思い出した。料理をしなくても食べられるものがあったんだ。
赤い木の実。皮をむかなくても食べられる木の実も収穫してきたんだった。
「ねぇ、これならすぐに食べられるけれど、食べる?」
ガルモさんが木を揺らして落としてくれた木の実。手の平に3つくらいのるほどのサイズのものが両手に抱えられないくらい収穫できた。
100個はあると思う。
一つが小さいからお腹が膨れないかもしれないけれど、足しにはなるよね。
「いや、本当だ。見て見ろ」
ガルモさんが背後を示した。
ここから見える場所にも、餓鬼さんたちの体がいくつも倒れて見える。
餓鬼頭さんたちの前に木の実を収納袋から出して置いていく。
「どうぞ」
【施餓鬼】
ああ、そういえばさっきから文字が簡潔な表示になっている。重ね掛けが切れたかな。
ぽんっ。ぽんっ。
赤い木の実が一つ減るごとに、ぽんっという音で餓鬼頭さんが弾けて花の香りを残す。
ふふ。
なんだか慣れてくると、消えるときにちょっとだけ嬉しそうな表情をしているように見える。
もし、本当に幸せな気持ちで消えているならいいな……。
「間違いない、間違いないぞリオ。倒せてる」
え?
「体が消えてるってことは、やっつけられてるってことだ。リオの渡した食べ物を食べてきてた頭の体が消滅してる。なんだ、人間の食べ物はそいつらには毒なのか?」
「ど、毒?」
びくりと体が震える。
私、毒を……毒を食べさせてるってこと?
赤い実に視線を落とす。
私、何ていうことを……。どうして、そんな……。
赤い実が消える。
ぽんっと音がする。
「だ、駄目だよ、毒なら食べちゃだめ……」
やだ、やだよ。そんなつもりなんてなかったのに
忘れてた!
いやぁー、赤い実を収穫したの、すっかり忘れてたの。
感想欄とか見て思い出したので慌てて使ったのでごわす。
うひゃー。
でもって、ちゃんこ鍋にならなかったのは、
ガルモさんがいなかったから。
って、ネイティブジャパニーズアイをお持ちの皆様にはお分かりですね……なんだよ、ネイティブジャパニーズアイって……変な単語作るなよ……。ごめん