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【まんま】
え?どういう意味?
【まんま:幼い子が使うご飯という意味の言葉】
その言葉に、ぐっと胸が詰まる。
幼い子が使う言葉……。どんな小さな子がお腹が空いて亡くなってしまったのか。泣きそうになる。
もう、餓鬼さんたちの命を救うことはできない。どれだけ皆苦しんで、そして、今も餓鬼としてさまよい苦しんでいるのか。
「どうぞ」
器を差し出すと、すぐに中身が消えて、ぽんっと音が聞こえる。
「よし、分かった。食えじゃないな、どうぞか。どうぞと言って両手で差し出す、分かった」
サージスさんが私の動作を見てうんうんと頷いている。
そんなの、もう、どうでもいい。
焼けた肉の元に走る。
「どうぞ、皆で食べて」
20ほどの串にささった肉が次々に消えていく。ぽんっぽんっぽんっと連続して小気味よい音が聞こえ、花の香りが強くなる。
【蓮の花の香】
蓮という花。さわやかな心が現れるような香りだ。
「ごめんね、すぐに焼くから、ちょっと待っていて」
焼けている肉はすでにない。急いで肉を切って串……木の棒にさして火の近くに置いて……。
「ああ、もう火も弱くなってきた。薪もいる……肉もこれだけしかないし……」
まだまだたくさんの餓鬼さんたちがいる。
「ダメだー!俺のちゃんこは食べてくれない。いや、マジで何が違う?なぁ、リオ……何か隠してないか?」
隠す?
いろいろ隠してるといえば隠してるけど、餓鬼さんたちがなぜ私の差し出した食べ物を食べてサージスさんの差し出した食べ物を食べないかの理由は分からない。
……あ。
「心?」
真心からとかなんか文字が出てた気がする。
「こ、心だと?そうか、それか!」
サージスさんが納得した。
「うまそうだな、やるのもったいないな、食べたいなって俺が少しでも思っているのがあいつらには見抜かれているのか!」
ふえ?いや、違うと思うんだけど……。
「とにかく、リオ、お前すごいな。火魔法でしか倒せないと思っていたのに。あいつらやっつけちゃうんだから」
「やっつける?え?あの、僕がやっつけたことになるの?」
複雑な気持ちになる。
倒したいとかやっつけたいなんてこれっぽっちも思ってなくて、ただ……。
「そうだろ、消えたんだ。いや、まぁ消えただけでどこかに行っただけって可能性もあるが、それでも街から消すことができるなら十分だろう!」
「サージスさん……敵……あの餓鬼たちに食べ物をあげることを怒らないの?」
サージスさんがああと、手を打った。
「確かに、そうか。敵に飯を食わせるなんておかしいよな。だけど、それで消えてくれるならどんどん食わせたほうがいいが……ああ、なるほど。なるほどな。敵に飯を食わせる、くくくっ、そんなことするのリオくらいだろう。リオらしい、リオだから見つけることができた対処法だな」
サージスさんが大きな手で頭をぐりぐりとなでられる。
あるいみ、サージスさんの言っている、「本当は食べさせたくない気持ち」が出てしまったというのも、あながち間違いではなかろう。
さて、いつもご覧いただきありがとうございます。久しぶりに買いておきます。
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