13話
「それ以上は鑑定スキルの出番ね」
やっぱりそうか。違うというのは分かったけれど、何かは分からないんだから、私は役立たずだ。
本当にもっと勉強しないとだめだ。無能スキルしかない私は、人の倍どころか、3倍も4倍もがんばらないと……。
ショックで泣きそうになっている場合ではない。頑張るんだ。
「で、そんなに血相を変えて、そろそろ鑑定結果を教えてくれない?」
ハルお姉さんの言葉に、ナイーシュラさんが口を開いた。あ、私もちゃんと覚えておかないと。
「千年草だよ」
ナイーシュラさんの言葉にハルお姉さんが口をぱっくり開けた。
「はぁー?千年草?約1000年に一度しかドロップされないことから呼ばれてるあれ?いや、だって、前のドロップ期間からまだ800年ちょっとしかたってないわよね?だから、私たちが生きてる間にはドロップしないだろうなって言われてた、あれ?何かの間違いじゃないの?もし、本当なら……た、大変だわ!」
ハルお姉さんが血相を変えてカウンターの奥の階段を駆け上がっていき、そのあとをナイーシュラさんが追いかけて行った。
残される私とサージスさん。
……えっと、私、テストされてたんだよね?やっぱり……不合格?
……3つ目の、千年草のこと知らなかったし……。
「……千年草か……。まさか、それが本当だとすると……やばいな……」
サージスさんが、何かを考え込むような表情をしてから、ギルドを出て行った。
私も、こうしてはいられない。
今日は仕事を紹介してもらえなかったけれど、次のテストでは合格点をもらって仕事を紹介してもらわないと!
千年草、まずはそれについて調べなくちゃ。
ギルドを出て、神殿に向かう。
神殿は、庶民に知識を与えるための場でもある。つまり、無料の学校。
「神父様!千年草について教えてくださいっ!」
「おや、リオ、また来たのかい?千年草?ちょっと待ってなさい」
神父様は、神殿の奥の書庫に入り、すぐに2冊の本を手に戻ってきた。
パラパラと本をめくり目を通す。
神父様のスキルは「速読」だと聞いたことがある。人にはないすごいスピードで本を読み記憶するすごい能力だ。
「準備はできたよ。千年草の何が知りたいんだい?」
「全部っ!」
元気に答えると神父様はふっと楽しそうに笑った。
「そうじゃな、いつもリオは小さなことでも聞き逃さないようにとワシの話を聞いておったの。では、本に書かれていた千年草についての情報をまとめて話すぞ。形は偽薬草に非常に似ている」
うん、確かにそうだった。葉脈に少し違いがあったくらいで。小さく頷くと、それを見ていた神父さんがふむと声をあげる。
「偽薬草のは見たことがあるじゃろうから、葉の形や枚数や色についての部分は省くぞ、ああ、出現場所や出すモンスターなどもほぼ薬草や偽薬草と同じじゃから省くぞ。ただ、一つだけ違うのは、いつでもドロップするわけではにということだ。約千年に一度、3か月間だけドロップする。だから千年草と言うそうじゃ」
すごい、千年に一度、3か月だけしかドロップしないなんて、すごくレアなんだよね。それを私は実際に見ることができたなんて、幸運だったんだ。
「歴史に記録されているだけで4度。一番最近は824年前じゃな。約千年に1度ということは、あと少なくとも100年ほどは見ることがないじゃろう」
え?
そういえば、ハルおねえさんも生きている間にはドロップしないだろうって言ってた。本にもそう書いてあるなら、間違ってないってことだよね。
それが、ちょっと早くにドロップするようになったってこと?もともとちょうど1000年じゃないんだから、100年や200年のずれが起きても不思議じゃないってことかな?記録があるのが4度しかないんだから、本当のところは分からないよね。