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「は?」
「だから、その、焼いて山椒かけた肉が美味しかったから、また焼いてくれって意味なんじゃないかって……」
サージスさんが鹿と私の顔と、フェンリルが立ち去った方向を見た。
「……そんな馬鹿な……」
ですよねー。信じられないですよね。
「いや、待てよ、もしかして、フェンリルには山椒が何らかの効果があるってことか?」
サージスさんがんーと、10秒ほど考え込む顔をしてから、うんと頷いた。
「まぁ、うまいもんな。分かった。とりあえずフェンリルが来る前に肉を焼くぞ」
あ、納得しちゃった。
【おいしいは正義:間違いない】
ん?サージスさんの顔に文字が。
「ガルモ、そちらは一人にまかせても大丈夫か?」
「ん?ああ、これくらいのペースなら平気だ」
「じゃぁ頼んだ」
サージスさんがガルモさんに声をかけてから、鹿をさばき始めた。
「ありがとうございます」
「いや、礼を言われるようなことはしてないぞ。フェンリルに山椒が効果があるなら、それはリオの手柄だし……っと、頭だけじゃ何もできないとわかっていても、こう周りをうろつかれると落ち着かないな。ちょっと待ってろ」
サージスさんが立ち上がり、剣を構えて思い切り振って、近くにいた餓鬼頭さんをスコーンと打ち飛ばした。
【ホームラン】
何?
ホームラン?
遠くまで飛んで行ってしまった餓鬼頭さん。
「ま、まって、サージスさん、大丈夫だって、言ったよね?その、そこまでしなくても……」
急いで木の実の器にちゃんこを注いで差し出す。
「おい、リオ何してるんだ、俺はまだお腹空いてないよ」
サージスさんには差し出してないっ!
「まぁ、食えというなら食うが」
食うな!
「サージスさんにじゃありません。お腹空ているんだよね、食べていいよ」
【施餓鬼:
差し出した器の中身が空になり、ぽんっと音がして餓鬼頭さんが花の香りを残して消える。
「いや、ちょっと待て、待てリオ!」
サージスさんが器を持つ私の手首をつかんだ。
「お前、今、何をした?」
サージスさんの顔が怖いくらい真剣だ。
何をしたって……。見ての通り、ちゃんこを食べてもらっただけなんだけど……。
怖いくらいのサージスさんの圧。
まさか、俺のちゃんこを!とか思ってる?
いや、確かに森で採取した食料は問題なくても、味噌。味噌は、サージスさんがダンジョンでモンスターをやっつけてくれたから手に入ったもので。
いわば、パーティーの共有の財産。それを勝手に餓鬼さんたちに食べさせた……戦っている相手に食べさせたって知れば、そりゃ怒るのも当たり前。
ううん、違う、違う。そうでなくって、やっぱり流石にあれだよね。
敵に食事を提供するなんて、誰だって怒る。
どうも。いつもありがとう。
サージスさんが疑われている。
俺の飯をよくも!他のやつに食べさせたな!と激怒していると、勘違いされている。
( ゜Д゜)がんばれサージスさん