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地面が揺れる。背後に何かが落下したのか。すごい音がして振り向く。
「うわぁっ!」
背後にいたのは、巨大な獣。
いいや、モンスター。
『グルルルル』
大きな口から、地を這うような低い唸り声に、思わず背筋に寒気が走る。
でも、すぐにジャパニーズアイの文字で収まる。
【助けを呼んだか?】
え?
巨大なモンスター。フェンリルの言葉は、私を気遣うものだ。
そうだ、さっき、なんか、助けてーとか言った。確かに、言ったけど。
えええ?それで来てくれたの?
『ぐるるるるる』
【なんだ、餓鬼に襲われているのか?あいつらを蹴散らせばいいのか?】
フェンリルが、ちらりと森の木々の隙間からこちらの様子をうかがっている頭たちに視線を向けた。
「いえ、あの、襲われてないです、あの、ご飯を、ご飯を食べに来ただけです」
慌ててフェンリルに話かける。
『クゥーン』
【ご飯?】
あっ、危ないっ。
フェンリルさんの口からぼたぼたとよだれが落ちてきた。2度目ともなると……というか、怖くて腰が抜けてしまった前回と違って、腰が抜けていないのでよだれ攻撃から逃れる。
「え、えっと、キビ団子はないんですけど、お肉とか……」
慌てて串に刺した肉を差し出す。焼けてるやつあってよかった。山椒を慌てて一振り。
あ、大丈夫かな、山椒。ちょっと辛いというかピリッとするというか。
『ぐるるる』
【ふむ、懐かしい香りだ。山椒は小粒でピリリと辛いという、山椒か?】
え?フェンリルさんは山椒を知ってるんだ。
と驚いている間に、ぺろりと器用に串から肉だけ舌でからめとって食べた。
『グルルルル』
フェンリさんのしっぽがぴぃーんと立ってから、くるくる丸まり、それからゆっくりと元に戻ってフリフリと振られた。
【うーん、この刺激が溜まらんな。そうか。前世の主はこんなにうまいものを食っていたのか】
前世の主?
フェンリルさんが串に刺した肉に視線を向ける。
「あ、あの、ごめんなさい、まだ焼けてなくて、ちょっと時間がかかります」
小さな肉のかけらじゃ足りないですよね……。と、思って声をかける。
ん?あれ?モンスターって、焼いた肉じゃないと食べられないのかな?別に生でも問題ないんじゃ?
『ぐるるる、ぐるる』
【問題ない。待とう。それより、何の助けが必要なのだ?】
待つの?やっぱり食べるの?
「あの、肉が足りなくなってしまって……僕には狩りはできないので誰か肉を持ってきてくれないかなぁと……」
フェンリルさんが食べるなら、余計に肉が足りなくなってしまう。
『ぐるるるるる』
【そうか。我にご馳走をふるまうための肉が欲しいというのだな。任せておけ】
あ、いや、違うけど。まぁ、でも結果的にそうなるの?どちらにしても肉を持ってきてくれるならありがたいです。
フェンリル登場!
……やっぱり、くいしん坊だった。
もう一度言うけど、名前はブルーじゃないからね!
……でも、たぶん、ブルーと何らかの接点はありそうだなぁww
しかし、くいしん坊ホイホイだなぁ、リオ……(´・ω・`)