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そういえば、見せてやるって言ったけれど、どんなスキルを持っているんだろう。知らないうちに見たことあるのか、まだスキルを発動していないのか……。
「ああそうだ。っと、緊急指名依頼があったんだな、もう、俺の出番はないなら向かわなきゃな」
サージスさんが最後に肉とちゃんこを目いっぱい口にほおばって勢いよく飲みこみ、腕輪に触れた。
「シャル、たのめるか」
すぐにシャルから返事が返ってきた。
「無理です。街にもアレが出没。ギルドから要人警護の指名依頼されました。いざという時に要人と飛んで逃げろって張り付いていろと……ったくめんどくさい」
「なんだと?王都にもアレが出たのか……」
「そうですよ。剣で断ち切れない厄介ややつ。火魔法で焼き尽くすしか倒せないとか……。火魔法スキル持ちも警護に当たってますけどね、なんせそっちにも回されてるから、逃げるしか能のない僕にも飛び火ですよ」
「あはは、王都にいたのが運の付きだな。陛下の護衛は断りようがないもんな」
へ、陛下の護衛?
「シャルは陛下の護衛をしているの?すごい。さすがシャルだね。きっと陛下もシャルみたいなすごい人に守られて安心だよね」
S級冒険者とずっと一緒にいるシャルだもん。そりゃ能力も皆に認められてるよね。すごいって、皆知ってるよね。
「剣で切れずに、火魔法でしか倒せないやつ?聞いたことないモンスターだな」
ガルモさんが首をかしげる。
「いや、切れるんだが、倒せない。ああ、あれは、モンスターじゃないかもしれないと誰かが言ってたな。厄災だと」
厄災?
死臭が漂ってきた。
「やばいな。奴ら、ここにも出てきたか……。そりゃそうか。街にもすでに現れたってことは、山の中だけにとどまるわけないか」
サージスさんが剣に手をかけ立ち上がる。
「おい、剣では倒せないんだろう?」
ガルモさんがサージスさんに声をかけた。
「ああ、だが、時間稼ぎはできる。首を落とせば、再生するまでの数分は足止めできる」
サージさんが腕輪の石に触れる。
「シャル、山を下りてふもとにも出てきた。足止めはできるが、火魔法スキル持ちをこちらにも回すようギルドに伝えてもらえるか?」
すぐに返事が返ってこない。
「あー、もうっ、王都も大混乱してますから、すぐには無理ですよ。紅蓮魔女に強制依頼を出したようですから……敵をなるべく1か所に集めないと駄目なんです。あー、もう、とにかくちょっと頑張っててください」
ぶつっと乱暴に通信が途切れた。
「紅蓮魔女……を出すのか……」
ポリポリとサージスさんが眉根を寄せて頭を掻いた。
はて。
紅蓮魔女……。
なにやら、皆さん、とある女性を想像したようですね?
ち、違いますからね!その女性じゃないですからね!