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ガルモさんが私の肩をぽんっと叩いた。
それからサージスさんの肩も。
「まぁあれだ。人はそれぞれ知ってること知らないこと、できることできないことが違うからいいんじゃないか?おいどんもリオにはドロップ品を売る話を教えてもらったしな。こうして皆に食べさせたいってのもリオのアイデアだ。おいどんは子供たちが食べていけるようにってことしか逆に考えてないからな。収納袋も買うのがもったいないと思っていたが、実際、もっと稼ごうと思えば買った方がよさそうというのもリオを見て初めて考え方が変わった」
「違うから……いい……」
「うちの子たちも、無能スキルって言われてるけどな、なかなか面白いんだよ。足の親指の爪を伸ばすスキルなんて持ってるやつがいるんだが、ちょっと意地悪を言ったやつの爪をこそっと伸ばしてるらしい。くくく。急に靴の中で爪が伸びたらどうなると思う?」
サージスさんが自分の足を見た。
「あー、痛いな。爪の手入れを怠って伸びたまま靴履いてると、痛いからな……」
「そう。いたたたと、足を抑える羽目になる。下の子たちがいじめっ子に追いかけられたらこうしてやっつけてるらしい。相手は、立派なスキル持ちだというのに、無能スキル持ち相手に痛みでうずくまるんだよ」
ガルモさんが楽しそうに笑った。
「スカッとするけどな、それでも、おいどんは子供にげんこつをくらわすんだ。スキルを使って人を傷つけちゃ駄目だとな。だけど、そのあとで肩車をしてやる。どれだけ立派なスキルを持っていたって、人をいじめるやつはクズだ。立派なスキルなんてなくたって、人を助けるお前はヒーローだと。クズにはなるなと。たとえ無能スキルだったとしても、親指が痛くてうずくまった人から財布を奪うことはできるだろう。だが、そうやって生きていくようなことはしてほしくない……おっと、何の話をしていたんだったか?」
ガルモさん……。
「おう、分かった。リオ……俺にはいろいろ足りないところがある。だけど、約束する。リオに近づくモンスターは全部やっつけてやる。それから、俺のスキルが見たいときはいつでも見せてやる。だから、ちょっとその、駄目な奴だと思っても、あー、そう、シャルみたいに何やってんの阿保なのとかはっきり言ってくれればいいから、その、一緒にいてくれ」
サージスさんがガルモさんの言葉を聞いて何を感じ取ったのか、さっきまでちょっと落ち込んだような表情をしていたけれど、吹っ切れたようだ。
いつものサージスさんの顔に戻った。
「サージスさんのスキル?」
ご覧いただき感謝いたします。
まぁ、いろいろな人がいます。
本当。
どこを向いて、何を考えているのか。それによって見えてくるものも違うし……
今、言えることは……うぐぐぐ、肩が痛いっ!んぐー時々無性に肩がこるぅぅぅ