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ふと、餓鬼の姿を思い出す。
食べられるものが山にはあるんだ。これ以上誰かが飢えて死ぬなんてしてほしくない。
「ああ、悪かった。そうだな。すまんリオ。誰かが採って街で売られるようになれば、もしリオがパーティーを抜けたいと言っても食べられるようになるんだよな……」
へ?
「サージスさん、僕、あの、サージスさんとシャルと一緒にいたいですっ!パーティーを抜けるなんてっ」
サージスさんがしゅんっと頭を下げた。
【犬の耳と尻尾】
何?幻の耳と尻尾が現れてサージスさんに見える。
しょんぼりと垂れる尻尾に、半分折れ曲がった耳。
ジャパニーズアイ、何を表現したいの?
【犬の耳と尻尾:漫画的表現】
漫画ってなに?答えになってないよ、ジャパニーズアイっ!
「俺は本当にダメな男だ……」
何を言ってるの?
皆があこがれるS級冒険者なのに!
「リオのこと、悪い子だと言ってしまったり……ああ、悪い子だなんて全然思ってないんだぞ、思ってないのに、傷つけるようなことを言ってしまった」
え?
「それに、自分のことばかりだ。他の人の助けになるとかそんなことこれっぽっちも考えずに、自分が美味しいものが食べたいってそればっかりで……」
サージスさんがガルモさんの顔を見た。
それから、私の顔を見る。
「こんな情けない男と一緒のパーティーなんて嫌だろう?」
ガルモさんがサージスさんの背中をバンバンと力強くたたいた。
「ははは、サージス、お前立派な男だな。ちゃんとそうして気がついたり反省したり、リオに正直に話ができたりできる。S級冒険者になるくらいだ。スキルもすごいの持ってるんじゃないか?だいたいスキルがすごいと自慢するような奴にろくな奴はいない。その点サージス、お前は本当に立派だ」
バンバンと、ガルモさんがサージスさんの背中をたたき続ける。
……すごい音がする。あの力で叩かれたら、私、飛んでいきそうだなぁ……と、なぜか会話の内容とは関係のないことを考えている。
「よかったなリオ。サージスと同じパーティーになれて」
ガルモさんがにこっと笑った。
「はい。僕、幸せですっ。あの、ずっと一緒のパーティーにいたいです」
まっすぐな目でサージスさんを見る。
「いいのか?俺は……その……」
サージスさんの目が自信なげにさまよう。
不思議だ。
私は駄目な人間だ。無能スキルしかないし。だから頑張らないと……とずっと思っていた。
サージスさんは、すごいスキルを持っていて、S級冒険者になったのに、それでも私と同じように駄目な人間だと思うことがあるんだって。
それがすごく不思議な感じで。
「ガルモさんの言う通り、サージスさんは立派です。あの、その……サージスさんは僕を馬鹿にしてないって分かります。ちゃんと分かります。あの、それに、ガルモさんに言われるまで僕も、自分たちが食べる分のことしか考えてなかったから、一緒ですし……それに……あの……」