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「ん?旨い。これまた初めて食べる味だ」
「森の中で見つけた小さなやつだったよな」
「ああ、なんか拾っていたな。それがこんなに肉をうまくするのか!」
なんだか、お話ししながら二人で仲良く肉をがつがつと食べています。
「サージスさん、ちゃんこ鍋も食べますか?」
「は?鍋を食べる?」
「あ、えーっと、ちゃんこ鍋という名前の料理で、えーっと、よそえばちゃんこ?なんか、えっと、その、シチューとかスープとかのようなものですけど、味噌味です……」
「食べる食べる。この際、美味しけりゃ鍋だって、ガリガリ食べるぜ!」
サージスさんの言葉に、がははとガルモさんが笑った。
「S級冒険者のサージスとは、冗談も面白いな」
……あの、ガルモさん、たぶんサージスさんは本気。冗談のつもりはないと思います……。思います。
だって、モンスターの足とか、何の躊躇もせずに食べる人です……。あ、だったら……。
実は味噌は、ハズレドロップ品で、通称「糞」と呼ばれているものですって知っても怒らないかな?
ぶるると身震いする。
いや、ダメダメ。サージスさんが怒らなくても他の人がサージスさんに何を食べさせたんだって怒るかも。
サージスさんなら、何のためらいもなく「これは実はリオが見つけた糞だ」とか言いそうだし。
……。
「ぐおおおお、リオ、お前、何てことしてくれたんだっ!」
へ?
ごめんなさい、糞のこと、ばれた?
ちゃんこを、雪平鍋から木の実の器に移したものを食べていたはずのサージスさんが、雪平鍋にがっつりちゃんこをすくってそこから食べ始めた。
「前に食べた味噌のやつも美味かったが、これはまた、なんてうまさだ。肉?柔らかいこの肉?鳥か?なんじゃこりゃ。この、臭みを全く感じない、何の鳥だ?こんな柔らかくてうまい肉の鳥」
ガルモさんが指をさした。空を。
「あれだ。あの鳥だ」
茶色い羽根で、首のあたりだけ白い羽根の大きな鳥が飛んでいる。
「ん?あれ?あんまり美味しくないヤツだぞ?」
「そうか?鳥なんて何でも同じようなものだろ?」
「いや、違う、違うぞ?いや、同じか!リオが料理した鳥と、それ以外の鳥っていう違いしかないか!」
「おう、サージス、そうだな、リオの料理した鳥は特別な感じだ」
「そうだろう、そうだろう、って、違う、そうじゃない、リオ……本当何てことしてくれたんだ!」
え?
あれ?
私、何か悪いことした?
「この大鍋、皆にも食べさせてやろうと思って作ったんだろう?」
「あ、……はい。その……」
びくっと首をすくめる。
シャルにも街でおとなしくしていろと言われたんだ。
こんなところに出てきて料理を作るなんて、駄目だったんだよね。