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「うわ、来た時も突然だったが、シャルは、転移スキル持ちか」
ガルモさんがびっくりして声を上げる。
「そうなんです」
なんだかシャルのすごさを認めてもらえたみたいで嬉しくなって弾んだ声が出た。
「ギルドに伝言って、何を伝えに行ったんだろうな?」
ガルモさんが山の中腹に目をやった。
「別に、モンスターは順調に退治されてて、それほど数も残っていなかったと思うが……」
煙が先ほどよりも多く上がっているような気がする。
「火魔法スキル使い過ぎで、水魔法スキル持ちの増援でも要請しに行ったのか?もし、思いもよらぬ高位モンスターが現れたのだとすれば、おいどんも加勢しに行くが……」
そうか。ガルモさんはもうすぐS級だと思われるA級冒険者ってシャルが言ってたから、強いんだよね。
確かに戦力が必要ならうってつけだよね。
えーっと。
あ、そうだ。
「ちょっと、聞いてみますっ!」
またまた、忘れそうになってたけれど、この通信機能付きの腕輪。
シャルとももちろん話ができるけれど、サージスさんともつながってるんだよね?石に触れて話をすればいいんだっけ?
「サージスさん、リオです。聞こえますか?」
「ん?おう、リオ、どうした?シャルに事情を聞いたか?そろそろ俺の出番は終わりだからもうすぐ帰るぞ」
「サージスさんの出番が終わり?えっと、モンスターはやっつけたんですか?シャルには会ったけれど、何も話を聞いてなくて。あの、山のふもとでお腹が空いたときにすぐに食べられるようにと料理をしていて」
「すぐ行く」
え?
「えーっと、いいんですか?」
「ああ、あとは火魔法スキル持ちの仕事だな」
火魔法スキル持ちの仕事?
「ひとまず、おいどんの仕事はなさそうだな。しかし、火魔法スキル持ちの仕事?山の中でのモンスター討伐なのに、おかしなことを言っていたな」
ガルモさんが肉をさばきだした。
「まぁ、どちらにしても腹をすかせた冒険者たちがそろそろ山を下りてくるってことだろう。肉を焼くか」
「はいっ!」
肉は、また山椒で味つければいいかな。
街で塩も買ったから塩味と山椒味。朴葉は見つからなかったから、朴葉味噌は作れない。
山椒の実は殻をすりつぶす。
ガサリと背後で音がする。
はっ。まさか、もうサージスさんが来たの?早すぎない?
急いでガルモさんが作ってくれた即席の木の実の器にちゃんこ鍋をよそって振り返る。
「あ……」
【餓鬼】
肌色の悪い、角の生えた生き物。
かつて人だったという……鬼。
『がるる』
えーっと、文字が出ない。そういえば、餓鬼の説明も表示されない……重ねがけのいくつかが消えた?
もう一度スキルを重ねようかとも思ったけれど……。
その必要はない。
だって、餓鬼の言葉はジャパニーズアイなんてなくても分かる。
いつもありがとうございます。
あ、今日祝日だ!