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「そう、僕のことも知らないみたいだし、リオのことも知っていて後をついてきたんじゃないんだ。じゃぁ、なんでリオを付け回すの?」
「シャ、シャル、付け回されてなんかないよっ!僕が、ガルモさんにお願いして鍋を借りたんだよ。それに、ガルモさんは親切にも、食材集めとか手伝ってくれたんだよ。すごくいい人なんだ」
シャルが、私の後ろの足元にある巨大鍋を見た。
「そもそも……なんで、こんなところで料理してるわけ?」
「サージスさんが、お腹空いたら力がでなくなって、モンスターに倒されて死んじゃうって言ってたから、だから、その、お腹がすいたらなるべく早く食べられるようにって……」
シャルがはぁーーーーーーーーーっと、長いため息をついた。
「そう簡単に死なないよ、サージスさんは。それよりも、リオの方こそこんなところまで来てモンスターに襲われたらどうするつもり?王都でなんで待っていられないの?危ないってわかってる?さぁ、もう王都に帰るよ」
シャルの手が私の腕に伸びる。
ああ、また飛ぶんだ。
せっかく作った料理が……。
でも、シャルは私を心配してくれてるんだもん。
でも。ガルモさんに鍋を借りたんだよ?
待ってと口を開こうと思った時に、ガルモさんがシャルの手首をつかんだ。
「待て、シャルといったな、お前がリオの身を心配しているのはよくわかった」
ガルモさんが、シャルの動きを止めたのだ。
「だが、勘違いするな。リオは危険なこともわかっている。そのうえで、皆の役に立ちたいとここまで来たんだ」
「ガルモさん……」
シャルがガルモさんの顔を見てから嫌そうな顔をする。
「は?正気なのリオ。危険なことが分かってるのに来たって?危険だってわかってたら来ないでくれる?サージスさんたち冒険者に任せておけばいいんだからさ。逆に迷惑になるとか考えなかったわけ?ねぇ?」
どすんっと、ガルモさんが大地を踏みしめた。
【しこを踏む】
ジャパニーズアイが何かを表示している。
ぶるっと地面が揺れるほどの足踏みだ。地面が数センチへこんでいる。
ガルモさんから、すさまじい気迫を感じる。ぶるっと思わず背筋が伸びる。
シャルもごくりと息を飲み込んだ。
「間違えるんじゃない。心配することは愛情だ。だが、心配して行動を制約して束縛するのは愛情じゃない。虐待だ」
シャルがひゅっと息を吸い込む。
「ぼ……僕は……」
シャルが顔を青くする。
「ガルモさん、シャルはそんなひどいことしません。あの、本当に僕は知らないことが多いから、その、僕のことを考えていてくれてるだけなんです。ちゃんと話をしなかった僕が悪いんです」
シャルが私の顔を見る。
(´・ω・`)いつもありがとう。
ガルモさんの言葉にどきりとする人もいるでしょう。
恋人、夫婦、相手の行動を制限しすぎるのはDVなんです。
親子……子供が心配のあまり行動を制限しすぎるのは虐待なんです。
匙加減が難しいと思います。
っていうか、鳥かごに閉じ込めるのは完全にアウトだぞーーーー、シャル!