11話
「だって、今まで預かってもらっていた分だって。僕、言いましたよね?もし、それ以上にもらってしまったら、なんか、その……フューゴさんたちが助かりたくて、僕に賄賂を送ったみたいに誤解されたら……」
サージスさんが大きなため息をついた。
「もらっちまえよ、慰謝料みたいなもんだろ、むしろ……って言いたいところだが、それじゃ気がみそうもないな。ハル、パーティーの評価をするために記録は取ってるんだろ?」
「もちろんよ。ちょっと待っていて」
ハルお姉さんがカウンターの向こう側に行き、職員の一人に声をかけた。
声をかけらえた人が、何かのスキルを発動している。事務に役立つスキルを持っているんだ。いいなぁ。
1枚の紙を覗き込みながら、ハルお姉さんが首を傾げた。
「リオ、あなたが雇われたのって、もしかして3か月前?」
「そうです」
「ずいぶんドロップ品の買い取り金額が上がっているわ……リオはこう見えてたくさんの荷物を運べるとか?」
買い取り金額が上がった?どうしてだろう?
「あの、運べる荷物は他の荷運者よりずっと少ないと思います」
ああ、こんなこと言っちゃ仕事を紹介してもらえないよ。
「だ、だから、えっと、高そうなドロップ品を運ぶようにして、安いドロップ品はそのまま拾わずにダンジョンの中に置いてくるようにして、厳選して運ぶように努力をし……」
ハルお姉さんがじろりと私の顔を見る。
「鑑定スキルはなかったわよね?安いとか高いとかどうしてわかるの?」
「べ、勉強して……。ドロップ品の特徴を覚えて、あと、モンスターごとに出る可能性のあるドロップ品の種類と、それからダンジョンの階層ごとに出てくるモンスターの情報もあるから、だから、えーっと、僕には、無能スキルしかないから、だから、せめて、勉強して役に立てればって……」
ハルお姉さんが口をあんぐりさせている。
「ドロップ品の特徴を覚えてって言っても、ほとんど素人じゃ見分けられないような似たものも……鑑定スキルがなきゃ……それに一つの階層で何種類のモンスターが出てくると思って……それを覚えて?しかも短い時間で判断して拾い集めるなんて……」
ハルお姉さんが何かを思いついたように、慌てて紙を持って走っていった。
それから、どこかへ行って、帰って来る。すごいスピードだ。
「リオ、はい、これがあなたの残りの報酬」
計算しに行ってくれたのか。そんなに急いでなかったのに、息を切らせている。親切だなぁ。
「それから、これがフューゴに返す分」
「え?」
思わず声が出る。
手渡されたのはリュックだ。
「現金を持ち歩いて落としたり盗まれたりしたら困るでしょ?いつ返せるか分からないんだし」
そうか。その通りだ。
「この鞄には盗難防止装置がついてるの。ギルド登録してある保障付きの鞄よ。フューゴに会った時にギルドに持って来ればすぐに現金と交換してあげるから」
「あ、ありがとうございます!鞄なら、いつも仕事でも持ち歩けるし、それに、盗難防止まで……ハルお姉さん、ありがとう!」
嬉しくてまた泣きそうになった。
私には絶対に思いつかないことだ。無能スキル持ちなのに、こんなに親切にしてもらってもいいのかな。
「ああ、それからその鞄、見た目よりもたくさん入って、重たいものを入れても軽く感じるから」
え?
それってまさか……。
「しゅ、収納鞄?」
数少ない収納鞄作成スキルを持った人が作るか、ダンジョンでドロップ品に頼るしかなくて、あまり数がないからとても高い……。
「ね、値段に見合う鞄が、今はそれしかなかっただけだからね!フィーゴに現金を渡すときにちゃんと清算するから値段のことは気にしなくていいし、べ、別に、特別扱いじゃないんだからね!」
【ツンデレ】
ん?またスキルが発動した?
意味の分からない言葉がハルお姉さんの顔の横に表示されてる。