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「余計駄目じゃん、何、知らない人を連れてきたのっ!王都の中ならまだ知らず、こんな人気のないとこ……」
シャルが頭を抱えてブツブツと何かをつぶやき始めた。
「何かあってからじゃ遅いんだから……ああ、もう、リオを一人にするんじゃなかった。違う、やっぱり鳥かごがいる。リオは部屋に閉じ込めておかなきゃ……」
何を言っているのかよく聞き取れないけれど、シャルの顔色は白い。怒りで真っ赤を通り越してもっともっと怒っている?
何をそんなに怒っているのか。
「名前を知っている程度、何度か会った程度では知り合いじゃない、知らない人にはついていっては駄目……えーっと、あ!あああ!もしかして、もしかしてっ、ぼ、僕とサージスさんのことも怒ってる?確かにサージスさんのことあまり知らないのについていったような……ご、ごめんなさい、ずうずうしくパーティーにはいっちゃったりして、そうだよね、そうだよね……よく知りもしないのに、ああっ」
シャルがふぅっと息を吐きだした。
「そうだった。そもそもサージスさんも人との距離感がおかしかったんだ……」
シャルが何かをあきらめたような目をする。
「いいか、リオ。お前の鞄の中にはたくさんのドロップ品が入っている。回りの人間は全部泥棒だと思え。名前を知っていても悪いやつもいる」
はっ。
そうだ。収納鞄は鞄には盗難対策はしてあっても、鞄ごと盗まれるのではなく、鞄の中身を取り出して持っていかれたらおしまいなんだった。
世の中には悪い人もいる……かな?
時々はいるかもしれないけど、全部泥棒なんて絶対にありえないよね。そんな風に思えない。
「うんと、悪い人はきっとどこかにいるかもしれないけれど……今まで会ったことないし」
「はぁ?」
シャルがガルモさんに視線を向けた。
「で、ガルモさんって、確かソロのA級冒険者のガルモさんですよね?もうすぐS級に上がると噂になってる。そのガルモさんが、リオになんの用ですか?」
「ん?おいどんのこと知ってるのか?」
「名前だけは噂で。流石に、現役のS級冒険者やS級候補の冒険者の名前くらいは知っています。冒険者や荷運者の常識ですよね?」
うひゃー。
私、その常識ないです。だって、だって。
私には到底関係のない人のことだと思っていたから。あああ、そうですよね。サージスさんとかシャルとかと知り合ったからには、いろいろと冒険者についても覚えて行かないとだめですよね。常識無しと言われない程度には勉強しないと……。
「すまん、その常識がおいどんにはない。噂話には興味がないからな」
その言葉にシャルがふっと小さく息を吐き出す。
いつもありがとうございます。
ガルモさんの一人称、悩みに悩んでおいどんになってももうた……。
もうさ、語尾もなんとかでごわすとか言いたいの。
途中からごわす言ってるけど、全部直そうか考え中。
なんか、だって、すっかり、力士なんだもぉーん。どすこぉーーーい!




