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「はい、あ、そうだ」
手に持っていたカップを鍋に入れて、お玉代わりにする。ちゃんこ鍋をすくって器に入れてみる。
あれ?カップの中身がなかったけどどうしたんだろう?餓鬼にあげようと思って入れて差し出して……それからどうしたっけ?
まぁいっか。
「あの、味見をお願いしても……」
ハズレドロップ品の糞だとか、木の根だとかいろいろ知られたくない秘密があるけれど、味は問題なくおいしいと思う。
「おう、もらうよ」
【力士とちゃんこ鍋】
器を受け取ったガルモさんに文字が出る。
力士っていうのはガルモさんのことだよね?力が強いっていってたから、力が強い人の呼び名って考えればいいのかな?
ちゃんこ鍋は、どうやらこの味噌味の料理のことのようだ。鍋というからには、このガルモさんが貸してくれた大きな鍋のことをさしているのかと思ったけれど、器に移したものにもちゃんこ鍋って出ているし。鍋なんて名前がついた料理。ちょっと不思議な感じだけれど、そういうこともあるのだろう。
「なんだこりゃ、すごい旨いな、いや、心にしみる味だ」
【力士がちゃんこ鍋を食べた】
いや、ジャパニーズアイのこの説明的な文字は何だろう。
「肉だよな。ついてる味は、なんだ?」
「えーっと、ショウガっていうもので、森の中で採取した植物の根っこです」
「ああ、なんかいろいろ取ってたもんな。そうか、森の中で食べ物を見つけるつっても、肉か木の実くらいしか思い浮かばなかったが……。根っこか……そうだ、芋も見つけてたよな?」
「はい、それがその芋です」
器の中の白いものを指さす。
「おう、……はふぅ……ほ、……なんだ、なんだ、これまたじゃがいもとも全く違う芋だな。ホクホクしているがしゃっきりもしている感じがする。面白くて汁に合う。あー、体もあったまる。なんだこの汁。うますぎるぞ」
【相撲取りのソウルフードだもの】
……。
知らない単語がいろいろ出てくるのはいいけれど、語尾のだものって?えーっと。どう解釈すれば?
「くあああっこれは駄目だ!」
ガルモさんが叫び声を上げた。
駄目?
まさか、お腹でも痛くなったとか。ちゃんと味見したけど、私は大丈夫だけど……。
不安になってガルモさんの顔色を窺う。
「坊主、こりゃ駄目だ。うますぎて、1人で全部食べちまいそうになる」
「あの、本当ですか?」
本当にそんなに美味しいと思ってくれるならよかった。材料さえばれなければ問題なさそうだ。
「本当だとも。さすがにすぐに全部っていう意味じゃないぞ?だが、間に昼寝を挟めば楽勝だ」
は?
え?
ガルモさんが声を上げる。
予約更新に切り替わり2日目。
ジャパニーズアイ、絶対、遊んでるよね?
何、そのナレーションみたいな文字!