104話
ガサリと、ガルモさんが向かった森とは反対側の木が揺れる音がして振り返る。
山の向きだ。
まさか、モンスターが?
一瞬身を固くして振り向く。
「あ、ああ」
人?
肌の色は薄茶色い。
髪の毛が抜け落ち、一瞬何かの病に侵された人なのかと思った。
けれど、すぐにジャパニーズアイがそうじゃないことを告げる。
【餓鬼】
鬼……。
神父様が絵にかいてくれた鬼の一種?
視線を頭に向ければ、角が確かに生えていた。
2本足で歩く姿は、獣やモンスターよりも、やはり人間に似ている。
お腹が妙に膨れて、他はガリガリの姿。凶作で、食べるものが不足する年には痩せてお腹ばかりが膨らんで亡くなる子供がいるというのも聞いたことがある。
けれど、木々から姿を現した生き物は、人ではない。
【スキルジャパニーズアイ発動:2重】
片目をつむると、スキルが発動する。2重か。確か3重にかけておいたものが、いつの間にか1重になっていたようだ。
【餓鬼:餓鬼道に落ちた人間の変わり果てた姿。常に飢えている】
両手を前に突き出しながら、餓鬼がこちらへとゆっくり近づいてくる。
鬼は、ずっと昔、千年草が現れた厄災として現れたって神父様が言っていた。
千年草が見つかったのだ。
厄災はいつ起きても不思議じゃない。
この鬼が厄災?
ゆっくりと動く姿。
人間の変わり果てた姿って書いてあった。
人間だったんだ。
飢えて……。
食べるものが食べられなくて、死んでいく子供たちがいるって言う話が頭の中でガンガン響いている。
その多くは……。
無能スキルしかない子供たち。
役立たずだと思われる子供から、食べ物が与えられなくなると……。
『ガガガガ』
餓鬼が、手を伸ばして木の葉をつかんだ。すると、すぐにつかまれた木の葉が消し炭のように真っ黒になる。
喉の奥で何か唸るような声を上げている。かつて人間だったというのに、言葉は忘れてしまったのだろうか。
餓鬼が私を見た。
うっ。
悪臭が漂ってきた。
距離は縮まり、10mほど先に餓鬼はいた。逃げなくちゃ……。
過去の厄災で出没したといわれる鬼だ。厄災を引き起こすほど強いのだろう。
……私みたいな弱っちい人間が戦ったって勝てるとは思えない。
いや、違う、違う。
体が動かない。
戦おうなんてそんなこと、全然頭に浮かばない。
悲しい、悲しい。
片目をつむる。
お腹が空いて死んでしまったの?
そうして鬼になったの?
【スキルジャパニーズアイ発動:3重】
涙が浮かび袖でぬぐう。ああ、ジャパニーズアイが3重になった。
『ガガガ』
足を引きずるようなゆっくりとした動きで、餓鬼が私の方に近づいてくる。
【ちょうだい】
ん?
文字が出た。
何?
ご覧いただきありがとうございます。
……えっと、ずっと前から出す予定だった餓鬼。
一昨日だか、昨日だか、ヤフーの記事に「イメージくつがえす餓鬼フィギュア」みたいなのが目に飛び込んできた。
……おにぎりをにぎっている餓鬼の写真付きの記事……。
ちょ、まって、まって、イメージ覆ってしまうと、その、困るぅぅぅぅぅっ。って、焦ったとまとです。
さて。
ちょっとバトルモードに入るような入らないような。