10話
「フューゴさんは上級剣士のスキル持っていてすごくて、きっと、いっぱい経験積んで訓練したら、すごい剣士になるんだろうなって思うと……。僕は昔そのフューゴさんの荷運者だったんだよって自慢出来たら楽しいなって想像するのが嬉しくて……」
下を向いていたフューゴさんが顔をあげた。
「ばっかか、お前……」
フューゴさんが、腰に下げていた袋を持ち上げて、僕に投げてきた。
「あ!」
落とさないようにキャッチすると、ずっしりとした重さがある。
中を見ると、お金だ。
「え?」
「やるよ。牢屋では役にたたねーし。その……悪かった」
牢屋?牢屋……。
「あ、あの、お姉さん、サージスさん、ほ、ほら、ほらね?見たでしょ?僕、お金もらったんだ。きっと、報酬は、僕が持ってると、よわっちくて誰かに盗まれるといけないからって、こうして代わりに持っていてくれただけなんだよ、だからね、僕ちゃんと報酬もらってるから、だから、許して」
お姉さんに訴えると、サージスさんが私の頭を撫でた。
「リオは馬鹿だなぁ……」
それから、サージスさんが頭をかいた。
「俺のドロップ品が盗まれたのも勘違いだ。これで、降格2つ分の罪が消えた。お前ら、F級冒険者から再出発だ」
サージスさんの言葉に、3人の縄がとかれた。
「ありがとう……」
小さな声でアリシアさんがつぶやき、私の手に指輪を一つ握らせてギルドを出て行った。
そのあとをフューゴが追う。
「怪我しすぎだ、僕がいなくなったら今までのように無理するな」
マイルズ君が丸薬の入った小瓶を僕のポケットにねじ込み最後に出て行った。
「まったく、泣きすぎ。っていうか、クロ……じゃない、リオはよく今まで無事に生きてこられたわね。ほら、涙拭いて……悪かったわ」
お姉さんがいい匂いのするハンカチで涙を拭いてくれた。左目、そして、右目……。
【スキルジャパニーズアイ発動】
ん?また声だ。
お姉さんの横に文字が見える。【ツンデレドジッコ】
何?ツンデレ?ドジッコ?どちらも知らない言葉だ。
というか、ちょこちょこ聞こえるスキル発動という言葉……もしかしなくても、ジャパニーズアイの新しい能力?
目が黒くなるだけじゃなかったの?
確かに、使っているうちにスキルでできることが増えていくこともある……けど、謎の文字が見えるって……。相変わらず全然役に立たない。
しかも、突然自分の意思とは関係なく発動するなんて……。
「おい、ハル、謝っておしまいってこたないよな?」
サージスさんがお姉さんに話しかけた。
受付のお姉さん、ハルって名前なんだ。
「も、もちろんよ。ちゃんと反省文は書くし、ギルド長からの処分だってたぶん減給も…受け入れ……」
お姉さんがしゅんっと肩を落とした。
「しょ、処分?なんで?お姉さんは悪くないのに?悪いのは、騙そうとした方でしょう?」
ってびっくりして涙が止まった。
だって、減給って、お金が少ししかもらえなくなったら、お姉さんすごく困るよね。
「ぷっ。ははははっ。そうか、そうか、リオ、お前、どこまでもお人よしだな。気に入った」
頭を乱暴に撫でられる。
サージスさん、頭をなでるの癖なのかな?それとも、身長が私と50センチくらい違うから、撫でやすい高さに私の頭があるのかな?
「ってか、ハル、お前も勘違いするな。俺が謝っておしまいじゃないよなって言ったのは、こいつにちゃんといい仕事見つけてくれるよなってことだ」
あ、そうだ。
「お願いします。あの、一生懸命働きます。あ、そうだ、ドロップ品を横領したりしないです、あの、これもっ」
フューゴさんに渡されたお金の入った巾着袋を差し出す。
「僕の報酬の分とフューゴさんの取り分が混じってると思うんです、あの、買い取りの記録とかで、金額分かりませんか?」
ハルお姉さんがぷっと噴出した。
「もらったんだから、横領じゃないのよ?ちゃんと見ていたし」
首を横に振る。