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66.驚愕

いつもの白々しいアレとかじゃなくてリアルにたまたま知ったんですが、漫画版「主人公じゃない!」の一部の話がコミックウォーカーさんで期間限定公開されてるっぽいですね

無料すぎて99%コミックスの売上が落ちてしまうので絶対に読まないでください!


「――宇津木 朔に乙名 梨乃、だな。よし、申請受領だ」


 先生がわたしと梨乃ちゃんの名前を名簿に記入したのを見届けて、わたしたちは二人で顔を見合わせた。


「これで、仲間だね」

「うん!」


 なんとなく小声で言い合って、二人で小さく笑い合う。

 ちょっとだけ特別な気持ちで待機場所に向かう途中、


「梨乃! 頑張れよ!」

「ガツンとやっちゃえよー!」


 梨乃ちゃんの本来のパーティの人たちから、梨乃ちゃんに向かって声援が飛ぶ。

 梨乃ちゃんが抜けた分、自分たちの戦力が減ってしまうのに、いい人たちだなぁと思う。


「いいパーティだね」

「……うん」


 わたしが小声でそう言うと、梨乃ちゃんは照れくさそうにコクリとうなずいた。


 なんだか胸が温かくなるような一幕。

 だけどその直後、そんな余韻をぶち壊すような声が、わたしの耳を打った。


「うっわ! やっば! 何この逆オールスター! もしかしてこの二人で試験受けるの? マジウケるんだけど!」

「座間さん……」


 隣で梨乃ちゃんがビクッと身体を震わせたのが分かる。

 いつのまにかわたしたちの目の前にはわたしの昔のパーティを引き連れた座間さんがいて、わたしたちをニヤニヤとした笑みで見ていた。


「こ、この学校の生徒なら、誰とパーティを組むのも自由、なはずです」


 震える声で、梨乃ちゃんが反論する。


 精一杯の勇気を振り絞ったその言葉。

 けれど座間さんにその思いが届いた様子はなかった。


 彼女はただ、わざとらしく「ぷっ」と噴き出してみせ、


「そりゃ、建前上はそうだけどさぁ! いやーほんとアンタらすっごいわー! わざわざ恥かくために試験受けるなんて、アタシにはとてもできないなぁ!」

「わ、わたしたちは……!」


 もう一度梨乃ちゃんが何かを言いかけるが、こんな人にかかわるだけ時間の無駄だ。


「……行こう、梨乃ちゃん」


 わたしは梨乃ちゃんの肩を抱くようにして、強引にその場をあとにする。

 ニヤニヤとした笑顔の座間さんとすれ違う、その瞬間、



「――調子乗んなよ、ゴミが。ウゼエんだよ」



 普段の作ったものではない低い声が、驚くほどの冷たさでわたしたちを貫いたのだった。



 ※ ※ ※



「大丈夫、梨乃ちゃん?」

「ご、ごめんね。わたしが助けに来たはずなのに、こんな……」


 距離を取って座間さんとは離れたものの、梨乃ちゃんはすっかり意気消沈してしまっていた。

 梨乃ちゃんはパーティにも恵まれ、


「……やっぱり、わたしなんかと二人でパーティ試験を受けるなんて、無茶だった、かな」


 今にも泣きそうな震える声で、梨乃ちゃんは言う。

 あくまでパーティ試験はその生徒の実力と連携を見る試験だ。


 人数が少なくても、人数に応じた力を見せればちゃんと評価はしてくれる。

 でもきっと、今はそんな理屈を言っても梨乃ちゃんの気持ちは変えられないだろう。


「ね、梨乃ちゃん。前に見たわたしのステータス、覚えてる?」


 突然の問いかけに梨乃ちゃんは戸惑いながらも、「う、うん。レベル八、だったよね」とうなずいた。


(懐かしいな……)


 まだわたしが前のパーティにいた頃、二人でお泊り会をした時に、お互いのステータスを見せあった。

 ちなみに、その時のわたしのステータスは、確かこんなだったはずだ。



――――――――――――――

【宇津木 朔】


クラス:吟遊詩人


LV:8

HP:92/92

MP:146/146


STR:18

MAG:63

CON:49

MND:87

SPD:35



【汎用スキル】

補助魔法 Lv2


【固有スキル】

幸運

応援

――――――――――――――



 そんなに昔ではないはずなのに、もはや今となっては郷愁すら感じるステータス。

 風流さんと出会わなかった場合の、わたしのある意味で正しいステータス。


 だけど、今は違う。

 風流さんと出会って、「すごいです係」になって、全てが変わったんだ。


「えへへ。あのね。みんなには内緒にしてたけど、あれからすごいパーティに入れてもらって、わたしもちょっと強くなったんだよ!」

「そう、なの……?」


 意識して、わざと明るい声で言う。


 風流さんにもらったこの力は、やっぱり自分に見合っているとは思えない。

 だから他人に見せびらかすのはちょっと違うと思うけれど、今だけはこの素敵な友達を元気づけるのに使わせてもらおうと思う。


 それに……。

 そうは言ってもやっぱりほんの少しだけ、成長したことを自慢してみたいというか、「梨乃ちゃんがこのステータスを見たらきっとびっくりするだろうな」という、ちょっとした悪戯心もあった。


 浮かびそうになるニヤニヤ笑いを抑えながら、わたしは梨乃ちゃんにステータスカードを……レベル二百超、ステータス平均千近くまで上がったわたしの成長の証を差し出した。


「梨乃ちゃんにだけ見せるけど、誰にも言わないでね」

「う、うん」


 不謹慎にもちょっとだけワクワクとしたわたしが見守る中、梨乃ちゃんはわたしのステータスカードを受け取った。

 そうして、


「……ひぅっ?」


 期待通り、梨乃ちゃんはわたしのステータスカードを見て目を真ん丸に大きくして、それからカードとわたしを何度も交互に見比べて、それから、




「……きゅぅ」




 小動物のような声を発したかと思うと、目を回して倒れてしまった。


「えええぇぇぇ!?」


 突然のことに驚きはしたものの、冒険者として成長したおかげだろうか。

 反射的に動いて、崩れ落ちる梨乃ちゃんをかろうじて受け止めることができた。


「だ、大丈夫!? 梨乃ちゃん! 梨乃ちゃん!?」


 漫画の一場面みたいな状況に慌てるが、梨乃ちゃんはただでさえ極度の緊張状態にあった。

 そこに一押しを加えてしまえば、こういうことになるのもありえない話じゃない。


 い、いや、というかもしかすると、わたしは自分の変化を甘く見ていたのかもしれない。

 風流さんがすごいことばかりやってのけるので、ほんの少しだけ感覚が麻痺していた気がする。


(そ、そうだよね! そりゃ友達のレベルがいきなり八から二百も上がってたらびっくりするよね!)


 わたしは焦って、まるで証拠を隠滅するみたいに急いで自分のステータスカードを回収して……。

 そこで目にしたものに、わたしも固まってしまった。


「……なに、これ?」



――――――――――――――

【宇津木 朔】


クラス:吟遊詩人


LV:404

HP:3125/3125

MP:6495/6495


STR:731

MAG:2558

CON:1990

MND:3533

SPD:1421



【汎用スキル】

補助魔法 Lv4

魔法制御 Lv3

風魔法  Lv2


【固有スキル】

幸運

応援

――――――――――――――

劇的ビフォーアフター!







乙名ちゃん、起きて!

あなたが目を覚まさないと、朔ちゃんの相棒がいなくなっちゃう!

そうしたら朔ちゃんが一人で模擬戦を戦うことになっちゃうんだから!


次回、第六十七話

「一人ぼっちの戦い!」

デュエルスタンバイ!

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成長率底辺のゲームキャラになった主人公が、裏技を使って英雄になっていく話です
主人公じゃない!

書籍二巻、コミック二巻ともに発売中!
二巻
― 新着の感想 ―
[気になる点] すごいです係のすごいです係は梨乃ちゃんか、それともザマちゃんか?
[一言] 前の魔力暴走からステータス確認してなかったのかな?
[良い点] デュエルスタンバイ! [一言] そろそろすごいです係のすごいです係が必要なのでは・・・!?ふーむ
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