プロフェッショナル ~すごいです係の流儀~
お久しぶりです!
いやぁ、長い夏休みでしたね!(爽やかな挨拶)
ちょっとだけ間が空いてしまったので、今回は復習を兼ねた特別編です
これ書くためだけに曲買ってBGMにしたら作業のProgressがすごい進んだので、みなさんもお手元のスガシ〇オを聞きながらお楽しみください
奧斗冒険者養成高等学校、二年A組。
宇津木 朔。
職業……すごいです係。
現代のダンジョン事情が生んだ全く新しい職業「すごいです係」。
これは、身近なようで遠い新職業「すごいです係」に魂を賭ける少女の、当たり前で特別な一日の、記録。
※ ※ ※
――すごいです係の朝は早い。
「ん、うー」
けたたましい目覚ましの音の中、彼女は目を覚ます。
寝ぼけ眼で洗面所に行き、諸々の用事を済ませた彼女は、必ず鏡に向かう。
それは、彼女がこの仕事についてから日課となった習慣。
鏡の前の自分を前に、彼女は大きく深呼吸をしてから、一つ一つの動作を確かめるように丁寧に打ち込みを始める。
「すごいです! すごいです! すごいです! すごいです!」
一流のすごいです係は、決して修練を怠らない。
表情に曇りはないか。
声はきちんと通っているか。
仕種で驚きを表現出来ているか。
わざとらしさはないか。
動きに勢いはあるか。
鏡像の自分を見て、そのフォームを入念に確認。
数えきれない試行錯誤の果てに、洗練された動作をさらに磨き上げていく。
全てはただ、たった一人の笑顔のために。
彼女はひたすらに、その「すごいです!」の完成度を高めていく。
今となっては定番化されたこの練習法も、確立されるまでには様々な苦労があったと彼女は振り返る。
「すごいです係の人口って、実は意外と少ないんですよ。シンジュクだと多く見積もっても一人くらいしかいないですし、全国でも大体一人程度しかいないんです。だから最初は、どんな練習をすればいいかもわからなくて……」
それは、第一人者であるがゆえの苦悩と……孤独。
すごいです係には教科書もなければ、先生もいない。
横一列でスタートを切るなんて贅沢は、彼女には与えられなかった。
それでも未知の暗闇の中を、彼女は手探りで歩を進めていく。
※ ※ ※
「今日は、うーん。これにしようかな」
冒険者養成校の学生と、すごいです係。
二足の草鞋を履く彼女にとって、休日は貴重な時間だ。
だからこそ、プロのすごいです係である彼女は、休日をただの休息には使わない。
「あ、始まった」
ソファに座り込む彼女が見つめる画面の先には、ダンジョン攻略動画。
真剣な眼差しの先には、Bランクダンジョンに挑む冒険者パーティの姿が映っていた。
「Bランクダンジョン攻略徹底公開……これは、期待できそうかも」
食い入るように動画を見つめ、彼女が行うのは「すごいです係」の「研究」だ。
つまり彼女がここまで真剣に動画を見ているのは、将来向かうダンジョンの予習して、ダンジョン攻略を円滑にするため……ではない。
「……そっか。普通のパーティはこの溶岩は凍らせないんだ」
どんなにすごいものでも、ずっと同じように接してしまえば、慣れてしまう。
初めて見た時の、あれほど鮮烈な「すごい」ですら、やがて風化していってしまう。
だから、彼女は学ぶ。
普通を。
平均を。
当たり前を。
――「すごくない」を。
知らず知らずのうちに、ほんのわずかにズレ始めていた常識を、調整する。
あらゆる「普通」を味わい尽くして、自分の感性を研ぎ澄ませていく。
――「すごい」を研究するために、まず「すごくない」を知る。
それが、彼女の行きついた答えだった。
※ ※ ※
もちろん、全く新しいこの職業に対して、世間の目は優しくない。
「え、と。すごいです係、だっけ? その、そこまで本気でやらなくても、いいんじゃない?」
中学生時代の友人に、そんなことを言われたこともある。
それでも、少女は語る。
「――確かに、わたしが手を抜いたって、誰にも怒られないと思う。でも、どんな小さなすごさも見逃さず、しっかりと丁寧にほめる。それができて初めて、わたしは胸を張って『すごいです係』を名乗れるんじゃないかなって思うんだ」
先人のいない苦しい道を、それでも精一杯、自分の足で歩き出そうとする彼女。
そんな彼女の姿勢に、周りの人々の視線も徐々に変わっていった。
「大丈夫? 頭打った? ちょっと休んだ方がいいよ。いやマジで」
そのうちの一人。
過剰なほど親身になってくれる友人の電話越しの労いを聞いても、彼女は止まらない。
「ありがとう。……でも、わたしの言葉で、笑顔になってくれる人がいるから」
そう言って遠くを見つめる彼女の瞳には、強い意思の灯が輝いていた。
※ ※ ※
――あなたにとって、「すごいです係」とは?
そう聞かれたとしたら、彼女が返す言葉は決まっている。
「――天職、です」
苦労して通い始めた冒険者養成学校の中で、彼女の立場はあまり、よくなかった。
需要の乏しい補助系魔法使いというだけで、クラスから爪弾きにされる日々。
遠巻きに聞こえる嘲笑の声や、仲間のはずのパーティメンバーからも冷遇される毎日は、次第に彼女から笑顔を奪っていった。
――何かがズレている。
――自分のいるべき場所は、ここじゃない。
そんな彼女の運命を変えたのが、たった一枚のパーティ募集だった。
――「すごいです係」。
笑ってしまうような文面と、荒唐無稽とも言える内容。
最初はほかのみんなのように、彼女もそれを笑い飛ばそうとした。
でも、出来なかった。
追い詰められた状況が、藁にすがりつく弱い心が、彼女の足を「彼」のもとに運んだのだ。
だけど今はそれを、何よりの幸運だったと思っている。
あきらめていた自分の道が、もうどこにもないと思っていた自分の居場所が、そこにはあったから。
「行ってきます!!」
だから彼女は、今日もダンジョンへの道を駆ける。
走る彼女の顔に、もう昔のような鬱屈も、悲痛もない。
ただただ晴れやかに、ただただ全力で、一心不乱に自分の定めた道を進む。
そしてその先にいる「彼」に、自分の全てをぶつけられる最愛の相棒に、今日もこう告げるのだ。
「――風流さん、すごいです!!」
懺悔すると、プ〇フェッショナルって一度もちゃんと見たことないです
この作品とは一ミリも関係ないんですけど宣伝しとくと、「主人公じゃない!」漫画版の二巻が今日発売です!
なので(?)今日の20時にもう一回にじゅゆを更新します!
タブンネ!




