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60.始まりを告げる言葉

なん……だと?

毎日更新の霊圧が……消えた?


(――流石に早く来すぎたかな?)


 時計で時間を確認してから、待ち合わせ場所である冒険者協会のロビーで朔を待つ。

 休日だけあって協会のロビーは混み合っているが、この喧噪が俺は嫌いではなかった。


 困っていると現れるという謎の仮面をかぶった正体不明の〈義賊〉の目撃情報に、ダンジョンの奥深くですすり泣くような女の声を聞いたという体験談。

 溶岩型のダンジョンに突然氷河湖が出現したなんていうゴシップや、ダンジョン外の普通の石畳の道がなぜか人の足の形にえぐりとられていた事件など、とても現代日本の話とは思えないような胡乱な噂がここにはあふれている。


 そんなのデマに決まってるだろ、と言いたくなるような現実味のない噂ばかりだが、全部が嘘だと決めつけられないところがこのダンジョンのある日本の怖いところだ。



「――風流さーん!」



 聞こえた声に顔を上げると、小柄な少女がぴょんぴょんと飛び跳ねるように手を振りながら、こちらに駆け寄ってくるのが見えた。


「もう来てたのか。今日はずいぶんと早いな」

「へっへへ! 今日は楽しみで、ちょっと早く来すぎちゃいました!」


 などとやんちゃに笑う朔だが、その気持ちは俺も分かる。

 なぜなら、


「それじゃ、早速行こうか、Bランクダンジョンへ!」

「はい!!」


 今日は初めての、「Bランクダンジョン」への挑戦日だからだ。



 ※ ※ ※



 朔とパーティを組み、そして名前を言いたくもないあの人との出会いを経てから数日後、俺たちはついにCランクの冒険者へとランクアップし、同時にBランクダンジョンへの探索許可が下りたのだ。


「も、もうCランクなんて……すごいです!」


 と、朔は無邪気に喜んでいたが、その前日、守成 月とかいう不審人物から「先日はご迷惑をおかけいたしました。これは心ばかりのお詫びの気持ちです。……あ、あと推薦はしておきましたし私は全く諦めてないので覚悟してくださいね」という手紙と高級和菓子が贈られてきていたが、これは全く関係ない話だと信じたい、うん。


 ちなみに高級和菓子はなんか食べるのも怖いので、「もらいものだけど甘いもの苦手だから」とジュンに押しつ……プレゼントしたら大変喜ばれた。

 いいことをするって気持ちいい。


「あの、どうかしましたか?」

「いや、個人情報の保護って大事だよなって」

「そう……ですね?」


 困惑したような朔の顔に、これじゃいけないと気持ちを切り替える。


 月の気配はもう覚えた(・・・)ので、これから出会わないようにすればいいだけだし、これから挑むBランクダンジョンは、浮かれた気持ちで挑めば手痛いしっぺ返しを受けかねない。


 俺たちをランクアップさせた時の、受付の人の言葉を思い出す。


『Bランクのダンジョンは、C以下のダンジョンとはまるで質が違います。魔物の強さは言うまでもなく、仕掛けはより巧妙に、かつ大掛かりになり、ダンジョンが明確に冒険者に対して殺意を持って向かってきます。それに、Bランクの冒険者の数はC以下の冒険者のおよそ五分の一程度しかいません。それは競争相手が少ないということでもありますが、ダンジョンでミスをしても誰にも助けてもらえない、ということも意味します』


 どこか愁いを帯びた彼女の瞳は、俺たちを通していなくなってしまった別の誰かを見ているようだった。


『お二人の強さは私も知っています。ですが、どうか慢心せず、お二人がどちらも欠けることなく、ここに元気な姿を見せに来てくれるように祈っています』


 彼女の言葉は、俺たちに冒険者としての気構えを思い起こさせてくれた。

 あの忠告がなければ、俺たちはどこかお遊び気分のままで、Bランクダンジョンに潜ってしまっていただろう。


 受付の人の言葉通り、今回潜るダンジョンには別パーティの突入予定はない。

 報酬は総取り出来る代わりに、他人からの救援は期待出来ない。


 長期戦になることも見越して、今回はちょっとした「秘密兵器」も用意してきた。

 俺たちはダンジョンの入口で「秘密兵器」を含めたアイテムの状態と個数をしっかりと確認し、


「――〈オールアップ〉!」


 中では長い詠唱が出来ないことも考慮して、突入前に補助魔法をかけておく。

 それに加え、


「っと、こっちも。〈プリンセスガード〉!!」


 今回は俺から朔に対しても補助魔法をかける。


 補助魔法についてはスキルは覚えたものの、魔法の詠唱を暗記するのがめんど……難易度が高く、すぐには使えるようにならなかった。

 それなら、とダメ元で俺の一番馴染みのある(・・・・・・)魔法を思い出して使ってみたら出来てしまったので、それからは補助魔法のレベル上げを兼ねてこうして朔に使っている、という訳だ。


 この〈プリンセスガード〉は能力を直接変動させるような魔法ではないので、朔は効果を把握していないようだが、「えへへ。プリンセス、えへへ……」と満更でもなさそうに笑っているし、まあ問題ないだろう。


 これで、準備は万端だ。


「行きましょう、風流さん!」

「ああ!」


 二人で息を合わせ、同時にダンジョンへと足を踏み出す。

 足がダンジョンに一歩を刻んだと思った瞬間、周りの景色が歪んだ。


「えっ!?」


 一瞬後、目の前に広がっていたのは、俺たちを見て邪悪に笑う数十匹を超える魔物の群れだった。


「初手、モンスターハウス! これが、Bランクダンジョンの歓迎って訳か!」

「風流さん!」


 怯えた朔の声が耳に届くが、俺に動揺はない。


 この程度の窮地、向こうの世界では何度だって切り抜けてきた。

 むしろこの逆境を誇るように、手のひらを突き出して、叫ぶ。



「――これが、俺たちの新しい冒険の第一歩! 長い戦いの、始まりの狼煙だ! 〈氷神覚醒〉!!」



 挨拶代わりに放たれた氷の魔法が、まるで俺たちの新しい門出を祝う祝砲のようにダンジョンを駆け抜ける。

 そして、






「ダンジョンのボスモンスターの討伐を確認しました」

「ダンジョンの全モンスターの討伐を確認しました」






 俺たちの長い戦いは秒で終わった。

はい






今朝急に思いついた話をねじ込んだから次の話なんも考えてなくて、まさにこれからが地獄だぞって感じだけど明日まで24時間あるしなんとでもなるはずだ!

ということで次回更新は明日!

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― 新着の感想 ―
[一言] 掲示板回を「作家が楽できる回」だと思ってる人いてヤバァ…ってなった
[一言] やっちゃうのは仕方ないとしても。 ……ドロ拾うの大変そう。下手すると見つからないところに落ちてるだろうし。 発見スキルか、収集スキル欲しいよね。
[一言] なんつーか。書けなかったら掲示板回でもすればいいのでは? やっちゃったなら利用しなくては。 ネタが行き詰まった時の時間稼ぎには良いと思うんだが。
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