54.新たな火種
昨日PCが点かなくなって終わったかと思いましたが何とか常態復帰しました
いやーやっぱ現代人はPCかネット環境取り上げられるだけで死にますね!
スマホの画面、「宇津木朔」と書かれた連絡先を見て、俺はついにんまりと笑顔を浮かべてしまった。
(――ようやく、これで冒険者としてスタートラインに立てたな)
思えば、遠回りばかりの道のりだった。
ランク制限で弱いダンジョンしか回れなかったり、ソロだとモンスタードロップが手に入らなかったり、思いがけない障害に足止めを食らい続けてきた。
(だけど、俺にもやっとパーティメンバーが出来た)
朔と一緒なら、俺だってドロップアイテムを手に入れられる。
じきにランクだって上がるだろう。
あ、ちなみにだが、「すごいです係」なんていうアホみたいな役割も文句も言わずに引き受けてくれた彼女だったが、唯一、報酬の配分だけは次回以降から変えることになった。
いや、俺は事前の取り決め通りに報酬は山分けでいいと言ったのだが、
「お願いです! お願いですから減額してください!」
と朔に泣いて縋られたので、次回から8:2で分けることになったのだ。
報酬の減額を告げると朔は「ありがとうございます! ありがとうございます!」と俺に何度も頭を下げて感謝していたが、何かが激しく間違っていると思う。
(本当に、半々でよかったんだけどな)
これは俺が朔に遠慮してるとか特別無欲だとかそういうことではなく、身も蓋もないことを言ってしまうとぶっちゃけ割とどうでもいいと思っているからだ。
一般に、冒険者はハイリスクハイリターンな仕事と言われているらしい。
それは、自分の命をチップにしてお金を稼いでいるというのもそうだが、高ランクのダンジョンのアイテムは高く売れる代わりに、高ランクのダンジョンで戦うためにはそれだけの大金が必要になるからだ。
装備品は高性能なものになるほど価格もメンテ費用も跳ね上がり、回復用のポーションやダンジョンギミックに対応するためのガジェットや野営の道具、と冒険に必要なものも増えてくる……らしいのだが。
(俺は着の身着のまま戦ってるしなぁ)
今のところ武器を使うまでもなく全員一撃で倒せてしまっているし、攻撃を受けるような場面もない。
HPが減らないのはもちろん、MPだって自然回復で十分なのでポーションの類も必要がない。
Cランクダンジョン程度なら日帰りで戻ってこれるので、宿泊用の道具なんかも使ったことがない。
ダンジョン探索にかかるという高い経費が、俺の場合は全くかかっていないのだ。
(ま、お金は使い道が出来るまで貯めておけばいいか)
いざとなれば朔に差額を押し付けるという手もある。
とにかく、今は正式なパーティメンバーが出来た事実を素直に喜んで……。
(っと、その前に)
そこで俺は、ようやくスマホを取り出した本当の目的を思い出した。
(パーティ募集、忘れずにひっこめておかないとな)
まあ、あれだけ待っても朔しかやってこなかったのだ。
焦らなくても問題ないと思うが、一応マナーとして取り下げをしないといけないだろう。
そんな風に思ってスマホの画面を操作していた俺の手が、止まる。
「…………え?」
俺が出していた「すごいです係」の募集。
そこに、新たに一件のメッセージが送られてきていたのだ。
※ ※ ※
(あの人、か?)
さっきあとにしたばかりの冒険者協会の建物を覗き込むと、目的の人物と思われる女性がそこに立っていた。
女性にしては高めの背に、長く伸ばされた濡れ羽色の髪。
どこか大人びた容姿の彼女は、メッセージによると朔と同じ冒険者養成学校の生徒のはずだが、
(……朔とは、オーラが違うな)
凛としたその立ち姿を見るだけで、そこから彼女の自信や覇気のようなものが伝わってくるようだった。
そんな俺の視線を察知したのだろうか。
ふと、彼女が顔をあげる。
目が合うと、彼女はすっと目を細め、躊躇わずに俺の方へと歩き出した。
「あなたが、この募集を出した篠塚風流さんですか?」
「そうです。あの、実は……」
もうパーティ募集は埋まってしまっているので、と続けようとした時だった。
「生徒会に、投書があったのです。明らかに虚偽の内容でパーティを募集し、騙された女性を食い物にしようとしている変質者がいる、と」
「え……」
「しかもそれに、我が校の女子生徒も巻き込まれているとなれば、座視する訳にも参りません」
刃物のような鋭さを持った彼女の言葉が、口にしかけた俺の言葉を断ち切った。
嫌な予感にあとじさる俺を前に、彼女は優雅な仕種で左手の手袋を脱ぎ、
「ではあらためて、奧斗冒険者養成学校生徒会所属、Aランク冒険者の守成 月。あなたに、魔法決闘を申し込みます」
口上と共に、俺に投げつけたのだった。
新たな強敵登場!!




