53.パワーレベリングはすごいです!!
なんだかんだ連載続いてますが、やっぱりこっちは一話短いですし、展開予想とかされても平気なので気楽に書けていいんですよね
最初に書いてた天啓で次のオチ全部感想欄に書かれた時とか冗談抜きにストレスで吐きそうになりましたし、伏線山盛り系作品は常に感想でのネタバレリスクとの戦いになるので相当気合入れないと書けないという欠点が……
その後も細々とした検証を進めたが、結局俺のスキル〈超成長〉が朔を強くしたという説を打ち崩すことは出来なかった。
それに気をよくしたのか、朔はしばらく、
「ふふん。やっぱりすごかったのは風流さんでしたね!」
とご満悦の様子だったが、帰り道では少しずつ口数が少なくなっていき、時間が経つごとに段々とその顔色が悪くなってきた。
「な、なんだか興奮して感覚が麻痺してましたけど。これ、冷静に考えたら、とんでもなくすごいことじゃないですか?」
朔はなぜか周りを気にするように見渡してから、声を潜めるようにしておずおずと口を開く。
「あの、最初に来た時のわたしは、まだレベル八でしたよね?」
「ああ」
「でもその日の冒険を終えて別れた時、レベル五十七になってましたよね?」
「うん」
一体何が言いたいのだろうか。
俺が適当に相槌を打っていると、青ざめた顔で朔が言った。
「――だったら風流さんがその気になれば、たった一日で誰でもレベル五十まで育てられちゃうってことじゃないですか!」
一息にそう叫んでから、朔はふるふると震えた。
「こ、こんなこと公表したら、絶対にたくさんの人がすごいです係に応募してきますよ! きっと百人、いえ、もしかすると千人だって集まるかもしれません!」
「すごいです係が千人……大漁だな」
集まった千人が全員「すごいです!」と声をそろえて言っているところを想像して、俺はちょっと笑ってしまった。
興奮した朔は、くわっと目を見開いてまくしたてた。
「も、もう! 笑いごとじゃないですよ! わ、わたしだって、そんな話を聞いたら毎年貯めてたお年玉を全部使ってもレベルアップさせてもらいに行くと思います!」
スケール感が完全に子供!!
というのはともかく、俺は首を振った。
「そりゃすごいかもしれないけど、もう関係ないさ」
人助けなら勇者時代に散々やった。
よっぽどの事情がない限り、今の俺は自分以外のために自分の力を使うつもりはない。
それに……。
「俺の『すごいです係』は、もう決まってるからな」
「あ……」
俺の言葉に、朔は信じられないとばかりに首を振る。
「で、でも、本当にわたしでいいんですか? レベルアップの問題が片付いたんだから、もっといい人が……」
往生際悪く言いかける朔の言葉を、俺は強引に遮った。
「俺は朔がいいって言ったじゃないか。それとも、俺を全力で支えてくれるって言ってたのは嘘だったのか?」
「ウ、ウソなんかじゃありません!」
朔はそう叫び、照れくさそうに目元についた雫を払うと、今度こそ笑顔を浮かべて胸を張る。
「そ、そこまで言われたら仕方ないです! わたし、頑張ります! 頑張って、一人前の『すごいです係』になってみせますから!!」
「ああ、期待してる」
一人前のすごいです係ってなんだろ、と一瞬だけ冷静な思考が頭をよぎったが、屈託のない顔で笑う朔を見ていると、そんな細かいことはどうでもよくなってしまった。
えへへ、と笑う朔と二人で、冒険者協会近くまで戻る。
どこか甘酸っぱい空気に耐え切れなくなった俺は、おどけた様子で協会の中を指さした。
「それじゃ、そんな有能な朔に最初の仕事だ。ダンジョンの成果は二人で山分けってのは覚えてるよな? 昨日の分のドロップアイテムの集計が終わってるはずだから、受け取ってきてくれ」
「わ! パーティの初報酬ですね! 任されました!!」
朔は目を輝かせながらうなずいて、ビシッと敬礼を返すと、元気よく冒険者協会のカウンターに突撃していく。
そして、
「――『すごいです係』は……報酬も、すごいです」
受け取った報酬のあまりの金額に、謎の遺言を残してその場にぶっ倒れたのだった。
俺たちの戦いはこれからだ!
あ、明日もふつーに更新予定です
※追記※
のはずでしたがPCトラブルにつき更新無期延期です