6.ステータスカード
「え、ええ。まずかったですか?」
「いや、もちろん、まずいなんてことはないよ。しかし、驚いたな。ここのダンジョンは曲がりなりにも特A級に指定されているはずなんだが……」
ジュライさんはそこで俺をキラキラとした目で見ると、こんなことを頼んできた。
「差し支えがなければ、君のステータスカードを見せてくれないか?」
「ステータスカード、ですか?」
「うん。それもステータスエフェクトが作り出したシステムの一つでね。他人にステータスを見せられるカードなんだ。もちろん、個人情報ではあるから拒否してくれても構わないんだけど……」
言いよどむジュライさんだが、俺に躊躇う理由もない。
「いいですよ。ただ、どうやって見せれば……」
「ああ。さっきの口ぶりだと君もステータスエフェクトのアクティベートはしたんだろう? それと同じ要領で、こう手を掲げて、『ステータスカード リアライズ』って口に出して言えばいいんだよ」
手本を見せるように突き出したジュライさんの手から、銀色のカードが出現した。
「ええと……『ステータスカード リアライズ』」
なんとなく恥ずかしさを覚えながらも、俺がキーワードを口にすると、何もなかったはずの空間から銀色のカードが出現した。
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【篠塚 風流】
クラス:ブレイバー
LV:12
HP:682
MP:1040
STR:440
MAG:755
CON:230
MND:275
SPD:215
【汎用スキル】
剣技 Lv3
炎魔法 Lv5
氷魔法 Lv2
【固有スキル】
奇運
超成長
炎陣乱舞
魔纏練装
氷神覚醒
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ちらりと見ると、あの巨人を倒して成長したのだろうか。
レベルが一から十二になって、能力値も軒並み倍程度まで上がっていた。
「これで、いいんですかね。どうぞ」
俺はそれをジュライさんに差し出すと、ジュライさんはカードを受け取り、すぐさま目を見開いた。
「な!? 職業ブレイバー!? それに、レベル十二でこの能力値の高さに固有スキルの多さは……」
ジュライさんはしばらく俺のステータスカードを食い入るように見ていたが、視線に気付くとごほんと咳ばらいをしてこちらを向いた。
「いや、取り乱してしまってすまなかったね。実は、ロストチャイルドは傾向として強い能力を授かることが多いんだ。基本的に、ステータスエフェクトの初期値は本人の資質とステータスエフェクトが生成された場所のダンジョン濃度に影響する、と言われている」
初めて聞く単語が多いが、なんとなくは分かった。
「ええと、つまりダンジョンの奥地で初めてステータスエフェクトが発現した人間の方が、安全な場所で発現した人間より強くなりやすいってことですか」
「そう、だね。ただ、レベルが十二でここまでのステータスは初めて見たよ。それに、この『ブレイバー』というクラス。これは、おそらく世界で君一人だけに発現した職業だ。これは、ダンジョン協会に報告したら大騒ぎになりそうだね」
そう言って、困ったようにほおをかく。
「あ、ちなみにだけど、ステータスで見られるのは能力値やスキルだけじゃないんだ。項目を選択することによってスキルの詳しい内容を見れたり、今までの犯罪歴や称号なんてのも見れたりする」
「あ、そうなんですか」
ステータスについては見たままを読み取っていただけなので、そういう情報は正直助かる。
「うん。例えばこの画面をスワイプするように動かすと、功績と称号の一覧が……は?」
「ど、どうしたんですか?」
明らかな異常事態に、「俺、また何かやっちゃいました?」と思いながらカードを覗き込む。
「こ、これ……」
そうして示したジュライさんの指の先。
そこには、「シンジュクダンジョン第五地区 エリアボス撃破」の文字が躍っていた。
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