48.すごいです係はすごいです!
15日目突破どころか5日目すら超えられなくなってきたのでゲームの気分転換に更新です!!
「そういえば、宇津木さんは〈幸運〉のほかにもめずらしいスキルを持ってるんだっけ?」
ドロップアイテムを集め終わり、ふたたびダンジョン探索に戻ったところで、隣を歩く朔に、風流はそんな話題を振ってきた。
「あ、はい。〈応援〉ってスキルなんですけど、効果があんまり研究されてないんですよね。ものすごくめずらしいってわけでもないんですけど、その、あんまり人気がないスキルなので……」
「そういうものなんだ? まあ、確かに俺も自分のスキルの効果、あんま分かってないけど」
不思議そうな風流に、朔は補足する。
「スキルの中でも、持っているだけで効果のあるパッシブスキルは、しっかりと検証しないと効果がはっきりしないものが多いらしいんです。逆に使用するタイプのスキルは、覚えるとある程度自分で使い方が分かるらしいんですけど……」
「なるほど。〈超成長〉なんかは効果がいまだにはっきりしないのに、〈氷神覚醒〉は覚えた時すぐに使い方分かったのは、そういう理屈か」
「そうみたいです。ま、まあわたしはそういうスキルは持ってないので、授業で聞いただけですけど……」
しかし、〈応援〉の効果が分からないということは、逆説的に〈応援〉のスキルはパッシブスキルだということが推察出来るということでもある。
「でもたぶん、補助魔法の効果を上げる効果があると思ったので、補助魔法を覚えることにしたんです」
「覚えることにした、ってことは、レベルアップで覚えたとかじゃないんだ?」
「あはは。固有スキルは生まれつきのものが多いですけど、汎用スキルは基本的にたくさん練習をしたり実戦で使ったりすることで覚えられるんです。練習は大変でしたけど、なんとか覚えられました」
朔は誇らしげに胸を張ったあと、ちょっとだけ声を潜めて口を開いた。
「だから、じゃないですけど、その……。〈応援〉の効果を確かめるためにも、もしよかったら補助魔法をかけさせてくれませんか?」
「え? 俺に、か?」
朔だって、今はもう風流の実力を疑っていない。
別に朔が何もしなくても、風流は一人でこのダンジョンのモンスターを薙ぎ払って進むだろう。
ただ、せっかくパーティを組んだのだから、もう少し風流の力になってあげたい、という気持ちが朔にそんな提案を口にさせた。
「いいのか? それならぜひお願いしたいけど、ええと、補助魔法ってどんなのがあるんだ?」
「基本的には能力値を増やすようなのがメインです。風流さんにかけるなら……あ、そうだ! MP減ってますよね。実はMPの自然回復を少し早くする魔法なんてのもあるんですけど……」
勢い込んで言った朔だったが、風流はばつが悪そうに目を逸らした。
「いや、気持ちは嬉しいけど、MPについては大丈夫かな。ほら」
そう言って、風流は自分のステータスカードを朔にかざした。
――――――――――――――
【篠塚 風流】
クラス:ブレイバー
LV:15
HP:786/786
MP:1240/1240
STR:502
MAG:901
CON:255
MND:315
SPD:245
【汎用スキル】
剣技 Lv5
炎魔法 Lv6
氷魔法 Lv7
感知 Lv2
【固有スキル】
奇運
超成長
炎陣乱舞
魔纏練装
氷神覚醒
超回復
――――――――――――――
「え、MPが全然減ってない?」
あれだけの規模の魔法を使いながらも最大値を保っているそのMPの値を見て、朔は目を丸くした。
「確か、レベルが十三か十四になったくらいの時かな。いつの間にか〈超回復〉ってスキルが増えてたんだ。きっとそれの効果だと思う」
「そ、そういえば、書いてありましたね」
自動回復系の固有スキルはいくつか確認されていて、どれも冒険者なら憧れる優良スキルだ。
増してや「超」回復なんてスキルであれば、その有用性は計り知れない。
「もともと〈氷神覚醒〉も全力で使ってる訳じゃないし、あんまり魔力が減ってる感じはなかったんだけど、少なくとも超回復のスキルを覚えてからは自分のMPが減ってるのを見たことがないんだ」
「それは、その……すごいですね」
またしても無意識にすごいですと口にしてしまったが、今回ばかりはもはやそれしか言葉がなかった。
(というかあの魔法、全力じゃなかったんだ)
あれで手加減しているなら、本気の〈氷神覚醒〉は一体どうなってしまうのか。
MP回復がかすんでしまうほどのインパクトに、朔はフラフラと頭を振る。
「え、えっと。だから、普通の補助魔法をかけてくれるかな。その、能力値が上がる奴を」
「……分かりました」
わざとらしい話の逸らし方だったが、それも自分のことを気遣ってのことだと思えば嬉しく思えた。
(不思議だな。今日初めて会った人なのに、こんなに応援したいって思えるなんて)
朔は小声で詠唱をしながらも、自分の心がかつてないほどに沸き立っていることに気付いた。
思い返せば、前のパーティにいた時は、言われるがままにどこか嫌々と補助魔法を使っていたように思う。
でも、今。
朔は誰に命じられるでもなく、ただ自分の意思で補助魔法を使おうとしている。
(――今なら、壁を越えられる気がする)
ステータスにスキル、まるでゲームみたいなシステムがはびこるこの世界だが、この世界は電子データで出来ている訳ではない。
人の能力は細かいコンディションや気持ちに影響されるし、心の持ちようだけで魔法の威力が変わることもある。
以前の朔では、補助魔法で上げられる能力値は二十が限界だった。
けれど、今なら……。
「――〈オールアップ〉!!」
全部の気持ちを魔法に込めるかのように、朔は高らかに魔法名を叫ぶ。
「お、おお……?」
すると、魔法で生まれた光が風流の周りを飛び回り、やがてその身体に吸い込まれていく。
「これで?」
「はい。少しだけ能力値が増えてるはずです。確かめてみてください」
朔の言葉に風流は嬉しそうにうなずいて、ステータスカードに目を落とす。
「なっ!? 嘘だろ、すげえ!」
だが、その表情はすぐに、驚愕に彩られることになった。
「ど、どうしたんですか!?」
慌てて近寄る朔に、風流は「これ!」とステータスカードを指さした。
そうやって示されたステータスカードの一角。
そこには――
――――――――――――――
【篠塚 風流】
クラス:ブレイバー
LV:15
HP:786/786
MP:1240/1240
STR:502(+21)
MAG:901(+21)
CON:255(+21)
MND:315(+21)
SPD:245(+21)
【汎用スキル】
剣技 Lv5
炎魔法 Lv6
氷魔法 Lv7
感知 Lv2
補助魔法 Lv1 NEW!!
【固有スキル】
奇運
超成長
炎陣乱舞
魔纏練装
氷神覚醒
超回復
――――――――――――――
――そこにはなぜか、ほんの十数秒前まではなかった「補助魔法」のスキルが生えていた。
「な、な、な……」
朔の中で、補助魔法を習得するために費やした時間が、苦しい練習の毎日が走馬灯のように頭をよぎる。
そうして朔は今度こそ、自分自身の意思で叫んだ。
「――すごい理不尽です!!」
ドロップ品どころかスキルまで増やす有能すごいです係
次回は(今度こそUntil 〇e Dieで15日目を突破出来たら)明日更新!
すでに160回ほど失敗してますが、きっと次のプレイで覚醒するので余裕です!!




