47.埋もれていた力
レベル上がったのに弱くなってるよ、って感想が来たので確かめたらかなりミスってたので、フール君のレベル15の時のステを少し直しました
どうしてこんなミスが発生したのか、コレガワカラナイ
目の前のありえない光景にしばらくフリーズしていた朔だったが、倒れた魔物が消滅し、アイテムに変わっていったのを見て、ハッと我に返った。
「ド、ドロップアイテム! 拾わないと!」
戦闘では貢献出来ない分、こういう仕事くらいは率先してやらないといけない。
そんな義務感に駆られた朔は、風流と二人で手分けして、散らばったドロップアイテムを拾い集める。
本来、モンスターから魔石以外のアイテムが落ちることは少ない。
しかし、その場に転がったドロップには、結構な割合で素材アイテムが混じっていた。
「これはヘルハウンドの牙! それにこっちはサラマンダーの皮!? あっ! ラーヴァゴーレムのコアまで!! す、すごいです!」
授業でしか見たことのないような高ランク素材に目を輝かせる朔。
しかし、風流は首を振った。
「いや、すごいのは宇津木さんだよ! 俺だけだったら、アイテムどころか魔石すら落としてくれなかったからさ!」
「あ、そ、そうでしたね」
確かパーティ募集にもそんな文面が書かれていたことを朔は思い出した。
「一応宝箱からはアイテムがもらえるから収入はあったんだけどさ。基本、ギルドへの実績になるのはモンスターが落としたドロップと魔石がメインだから、ランクも全然上がらないし……」
そう愚痴をこぼす風流は、本当に参っているように見えた。
朔はさっきまで、風流のあまりのすさまじさに完全に頭が真っ白になっていたが、
(なら、わたしもちょっとは役に立ててる……のかな?)
こんな強い人の力になれていると思うと、何だか少し、嬉しい気がした。
それからさらに気合を入れて朔はアイテムを拾っていたが、粗方のアイテムを拾い終えたところで、風流は不思議そうに言った。
「それにしても、やっぱりモンスター素材が多くないか?」
「い、言われてみれば……」
めずらしい素材に気を取られてあまり深く考えてはいなかったが、以前のパーティでのドロップと比べても、明らかに魔石以外の希少アイテムの率が高い。
「これってやっぱり宇津木さんの〈幸運〉スキルのおかげなのかな?」
「わ、わたしもこんなにレアドロップが落ちたのは初めてで……」
初めての現象に戸惑う朔だが、不意に以前に受けた授業の内容を思い出した。
「あ、そっか! パーティ人数!!」
「パーティ人数?」
オウム返しに尋ねてくる風流に、朔は思い出しながら説明をする。
「ええと、〈幸運〉スキルは有名なのでかなり研究がされていて、『レアドロップ率が三倍になる』効果があるって言われてるんです」
「三倍!? めちゃくちゃすごいスキルじゃないか!」
その効果に風流は驚くが、「確かにそれだけならすごかった、んですけど……」と朔は言いよどんだ。
確かに朔も、初めて聞いた時は「これは大当たりのスキルだ」と喜んだのだが、そこには落とし穴もあったのだ。
「実は、レアドロップ率が三倍になるのはソロでモンスターを倒した場合で、パーティを組んだ場合、レアドロップ率も『パーティ全体の平均』になっちゃうらしいんです」
例えば通常の人間のドロップ運を1、幸運持ちのドロップ運を仮に3とする。
通常のパーティであればパーティメンバーは六人なので、もし幸運持ちがいたとしてもパーティ全体のドロップ運は三割程度しか増えない。
そして、朔は補助魔法使い。
ソロで戦うなんてもってのほかだし、大人数のパーティで支援をするのが基本になるため、その恩恵はだいぶ薄まってしまうことになるのだ。
ただ、今回のような特殊なケース。
やたら強い人が相方になっていて、パーティ人数が二人でも戦える場合には……。
「ドロップ運の平均は2。つまり、通常の倍の確率でレアドロップが落ちるってことか」
「た、たぶん……」
それだけにしてはいいものが落ちすぎな気がするので、あるいは風流の〈奇運〉というスキルも関わっているのかもしれないが、そこまでは朔には分からなかった。
「なるほどなぁ。いやー、ドロップ品はよくなるし、すごいです係としても有能だし、宇津木さんとパーティを組めてよかったよ!」
「ゆ、有能!? わたしが、ですか?」
今まで言われたことのない評価に、朔は飛び上がる。
しかし、ドロップについてはともかく、「すごいです係」として何かをしたような記憶は朔にはなかった。
「ほら、ちょこちょこ言ってくれてたけどさ。特にさっき魔物を倒した時の『すご、い……』なんてめちゃくちゃ真に迫ってて、ほんと演技派だなぁって思ったよ」
「あ、それは……」
真に迫るも何も、本当にただすごいと思ったからそれをそのまま口にしてしまっただけなのだが、それが思わぬ好印象を与えていたようだった。
勘違いで褒められるのはちょっとだけ気まずいが、
(でも……えへへ。パーティを組めてよかった、か)
今までずっと邪魔者扱いされてきた朔にとっては、それは何より嬉しい言葉だった。
頑張って表情を引き締めようとするが、ついつい口元がにやけてしまうのを止められない。
(前のパーティにいた時は、全然褒めてもらったことなかったからなぁ)
お前には戦闘力がないからと雑用ばかりをやらされて、一生懸命補助魔法を使ってもこんな効果じゃ意味ないよと怒鳴られた。
それでもパーティを組んだ以上、〈幸運〉スキルの恩恵はあったはずなのだが、それについても「おい! ドロップ三倍になるんじゃなかったのかよ! 話が違うぞ!」と詐欺師扱いされる始末。
(それに比べたら、うん。この人はちょっと変わってるけど、こっちの方がずっといいな)
もともと朔は、自分が強くなるために冒険者になった訳じゃない。
冒険者としてやっていくために必要だから強くなろうとはしているが、どちらかというと人を支えたり手助けする方が趣味には合っている。
(強くなれないのは残念だけど、こういうのもありかも)
この「すごいです係」は次のパーティが見つかるまでのお試し。
もしうまく行ったとしても、一回限りにする、と考えていた。
けれど……。
(――あともう一回、ううん、あと二、三回くらいなら続けてみてもいい……かな)
朔の中で少しずつ、心境の変化が生まれていたのだった。
順調に沼にハマっていく……
次回は(Until We 〇ieの難易度カスタムで15日目を突破出来たら)明日更新です!!
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