表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/89

46.Dランク冒険者はすごいです!

「明日更新する」と予告していた本作ですが、さらなるクオリティアップのため、更新日を6月28日に延期することを決定致しました

リリースをお待ち頂いていたお客様には多大なご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解賜りたくお願い申し上げます


にじゅゆ製作スタッフ一同


 Cランクのモンスター〈ヘルハウンド〉複数匹を一瞬で討伐するという離れ業を見せられて、目を見開いたまま固まってしまった朔。


「大丈夫? 怪我はなかったよね?」


 しかし、立ちすくんでしまった朔を心配した様子の風流に、朔は再起動し、自然と詰め寄っていた。


「だ、大丈夫です。大丈夫ですけど、待ってください! 風流さんは、本当にまだレベル十五……なんですよね?」

「え? ああ。ステータス見る?」


 そう言って、風流は軽い感じでステータスカードを朔に寄越した。

 その態度に思うところがない訳ではなかったが、目にしたステータスはそれら全てを忘れさせた。



――――――――――――――

【篠塚 風流】


クラス:ブレイバー


LV:15

HP:786/786

MP:1240/1240


STR:502

MAG:901

CON:255

MND:315

SPD:245



【汎用スキル】

剣技  Lv5

炎魔法 Lv6

氷魔法 Lv7

感知  Lv2


【固有スキル】

奇運

超成長

炎陣乱舞

魔纏練装

氷神覚醒

超回復


――――――――――――――



「つ、つよ……っ」


 つい口から言葉が漏れそうになって、とっさに口元を押さえた。

 驚きは、もはや言葉にすらならなかった。


 朔だって以前のパーティにいた時、他人のステータスくらいは見たことがある。

 だが、その時のレベル三十の味方と比べても、風流のステータスは負けていないどころか明らかに優っていた。


(みんな、一番高い能力値でも二百まで届いてなかったし、低い能力は五十に届いてないなんてこともあった)


 なのに、風流の能力値は一番低い速度ですら二百を超え、一番高い魔力に至っては九百の大台に乗っている。



 ――おおよそ、常人の五倍。



 それが、風流の能力値に対する、朔の見立てだった。


 つまり風流はレベル十五でありながら、レベル七十五クラスの能力値を持っていることになる。

 この能力値なら、Cランクモンスター程度蹴散らせても何の不思議もない。


 いや、それだけじゃない。


(こ、固有スキルが、こんなに?)


 固有スキルは最初から持っていることもあれば、後天的に獲得出来ることもあるが、そうポンポン増えるものじゃない。

 Cランク程度の冒険者なら一つあればラッキー、二つあれば稀有というレベルだ。


(それが、六つ……)


 自分が固有スキルを二つ持っていることを自慢にしていた朔からしたら、もはや異常と言えるレベル。


 それに、恐ろしいのは数だけじゃない。

 書いてあるスキルがどれもこれも見るからに恐ろしい。


 一般的で、取得が容易な固有スキルは名前と効果がはっきりと流布されているものが多い。

 だが、風流のスキルはほとんどが聞いたことすらないような名前のものだし、「超」や「神」がつくようなスキルは強力なものが多いと朔も授業で習った覚えがあった。


(これでDランク!? それって一体、何の冗談で……)


 朔は、自分の頭がぐらぐらと揺れ、同時に自分の常識までもぐらぐらと揺らいでいくような心地がした。

 しかし、事態は朔の心の安定を待ってはくれない。


「……お、今の戦闘音を聞きつけたのかな。モンスターたちがたくさんこっちに向かってるみたいだ」


 ステータスカードを持ったまま立ち尽くす朔に、風流は事もなげに言う。

 朔からすれば死刑宣告にも等しいその言葉に、彼女の顔色は一瞬のうちに真っ白に変わる。


「そんな! それって……」

「ああ。ラッキー(・・・・)だな」


 だが、風流はむしろ楽しそうに微笑んだ。

 その言葉の意味を理解出来ないままに、朔の目にもその魔物の大群の姿が飛び込んでくる。


 先頭を行くのはさっきも見たヘルハウンド。

 それに先導されるようにしてほかの魔物、オーガの亜種であるレッドオーガや炎の精霊であるフレイムスピリットの姿が大量にあり、その一番奥には一体だけではあるが、Bランクに分類される魔物であるラーヴァゴーレムの姿まで見えた。


「あ、あれは……!」


 そして、ゴーレムの肩に真っ赤なトカゲが乗っているのを見て、今度こそ朔は悲鳴をあげる。


「サ、サラマンダー!!」


 それは養成学校の授業で習った、自爆モンスターと並ぶパーティ崩壊の主要因。

 あの真っ赤なトカゲ型のモンスターである〈サラマンダー〉は全ての能力がCランクモンスターにしては軒並み低いが、その代わりに一度だけ、竜種と紛うほどの炎のブレスを吐くことが出来る。


「気を付けて! あいつは、炎を……」


 だが、その警告は遅すぎた。

 ほかのモンスターを利用していち早く朔たちに近付いてきたサラマンダーは、その頬にある火袋いっぱいに空気を吸い込む。


 それは、疑いようもないブレスの予兆だ。

 それに対するかのように風流が右腕を上げ、そこに氷の気配が生まれるが、


「ダ、ダメです! 氷じゃ、属性相性が……」


 炎を、氷で防げるはずがない。

 朔が自分の運命を悟って思わず目を閉じかけた、次の瞬間、



「――〈氷神覚醒〉」



 朔たちを燃やし尽くすはずだった灼熱の吐息が、一瞬のうちに凍りついていた。


「……へ?」


「炎が凍る」というどんな角度から考えてみてもありえないその現象に、朔の思考も凍りつく。

 凍りついた炎は一瞬だけ質量を持ったかのようにして重力に引かれて落ちて、そのまま空中でダイヤモンドダストとなって霧散した。


 いや、それどころじゃない。


「よし、大漁だ!」


 凍ったブレスの先にいた大量のモンスター。

 その全てが、一匹残らず炎のブレスと同様に凍りつき、氷の彫像と化していた。



「すご、い……」



 あまりにも圧倒的。

 あまりにも強力なその魔法に、操られるように朔の口が動いた。


 ヘルハウンドやサラマンダーだけじゃない。

 Bランクのモンスターで溶岩の身体を持つラーヴァゴーレムや、炎そのものを肉体とするフレイムスピリットまで、そんなもの何の障害にもならないとばかりに凍りついていた。


 属性相性すら超越し、世界の理すら捻じ曲げるほどのバカげた効果。

 そしてその魔法を、ほんの一言の呪文だけで発現させたという同じくらいに信じがたい事実。


 ――それを理解して、朔は考える。


 初めは、ただの詐欺だと思った。

 自分のことを大げさに吹聴して、ただ女の子をひっかけるだけのナンパ野郎なのかと思っていた。


 だが、もしかして……。

 もしかして、本当にもしかして、だけれど……。



(――この人、すごいです係なんて頼まなくても素で十分すごいのでは?)



気付いてしまった真実!!





次回、第47話

「今度こそ覚醒! 秘められし才能の開花」

は6月29日の夕方7時から、web限定で放送開始!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
成長率底辺のゲームキャラになった主人公が、裏技を使って英雄になっていく話です
主人公じゃない!

書籍二巻、コミック二巻ともに発売中!
二巻
― 新着の感想 ―
[気になる点] 朔ちんのレベルは上がってるのかな?
[良い点] 6話のレベル12から3つもレベルアップしてるのに、ステータスのSTRが下がるなんすごい奴たぜ! [気になる点] 実際これはただの書き間違えなのか、それとも〈氷神覚醒〉しかしていない事の弊害…
[一言] 更新されてすごいです! MPが減ってないのは超回復のおかげかな? MP切れ無しなんてすごいです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ