44.ファーストコンタクト
とりあえずストックが尽きるまでは毎日更新する予定です
まあストックとか最初からないんですけどね!
(うあぁ、胃がキリキリしてきた……)
待ち合わせの場所に向かいながら、宇津木 朔は何度も読み返したパーティ募集をもう一度読む。
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【募集する役割】
・すごいです係
探索についてきて、こちらが何かする度に「すごいです!」と褒めてくれる人を募集します。
【必須条件】
・お世辞がうまいこと
自然に、かつ全力で褒めてくれる人を歓迎します。
【推奨条件】
・冒険者として強くなりたくないけどお金だけはほしい方
・安全にダンジョンアタック気分を味わいたい方
パワーレベリングになるので、能力値は上昇しない可能性が高いです。
「別に能力値なんて上がらなくてもいいや」という人だけ来てください!
【報酬】
ダンジョンで手に入ったものを人数で山分け
【募集者パーティ情報】
ブレイバー LV15(ランクD)
ソロです。
Aランクまでのモンスターなら一撃で倒せますが、スキルに副作用があってソロではドロップアイテムが手に入りません。
戦闘とマップ探索と索敵と罠解除は自前で行えるので、パーティを組みつつ話し相手になってくれる人を探しています。
【探索ペース】
ダンジョンアタックは休日以外は一回三時間程度。
昇級まではCランクダンジョンを中心に、一日一ダンジョン制覇ののんびりペースでやっていく予定です。
【アピールポイント】
安全に配慮し、ダンジョン突入前に脱出石を支給します。
モンスターや罠は見つけ次第破壊する予定ですが、少しでも危ないなぁと思ったらそれを使って逃げてください。
【一言】
極論パーティ組んでついてきてくれればそれだけでいいんですが、どうせならちやほやされたいのでこの条件で募集しました!
性別年齢は問いませんが、出来れば可愛い女の子にキャーキャー言われたいです!
よろしくお願いします!
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何度読んでも正気で書いたとは思えない、頭のおかしい募集内容に、朔は頭を抱える。
こんな募集に応募するなんて、正気の沙汰じゃないと朔も頭では分かっていた。
(でも……)
前のパーティを追い出されてから、朔はとにかく手当たり次第に新しいパーティを見つけようと奮闘してみたが、その全ては無駄に終わった。
それでも、それなりに強ければソロでの冒険も視野に入ってくるのかもしれないが……。
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【宇津木 朔】
クラス:吟遊詩人
LV:8
HP:92/92
MP:146/146
STR:18
MAG:63
CON:49
MND:87
SPD:35
【汎用スキル】
補助魔法 Lv2
【固有スキル】
幸運
応援
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(うう……。やっぱりわたしって弱いなぁ)
ステータスカードを見て、軽く落ち込む。
素質自体は言うほど悪くもないらしいが、とにかく補助専門というのが現状不遇すぎる。
敵を倒す機会がないからレベルも上がらないし、戦闘貢献も少ないから上昇するのも戦闘に関わらないものがメインになる。
このステータスとスキルでは、どうあがいてもソロではやっていけないと、朔は早々に見切りをつけていた。
新しいパーティは見つからず、ソロでダンジョンに潜るには力が足りない。
そんな風に追い詰められた時、ふと思い出したのがこの「すごいです係」の募集だったのだ。
もちろん、朔は一人前の冒険者になるのが目標なのだから、パワーレベリングのせいで能力値が上がらないという部分は気になる。
それでも、ここで冒険者をあきらめてしまえば、いくら伸びしろだけがあったって意味がない。
思いつめた末に朔はこの「すごいです係」に応募することにしたのだった。
知り合い同士であれば直接募集者に声をかけたり、なんてこともあるらしいが、当然ながら朔はこの募集を出した風流のことは全く知らなかったため、パーティ募集のシステムを使って連絡を取り、待ち合わせの日時とお互いの特徴を教え合った。
(でも、よく考えたらやっぱりおかしい……よね?)
LV15の人がAランクのモンスターを倒せるはずなんてないし、仮に万が一、何かのからくりがあって倒せるとしたら、冒険者ランクがDのままなんてことはありえない。
大げさに言っているのか、それとも自分ではそう思い込んでいるのか。
(強い冒険者のフリをして女の子をひっかける詐欺が流行ってるって言うし……)
とにかく、気を抜いちゃいけない。
朔はギュッと唇を引き結ぶと、冒険者協会に向かった。
(あれ? もしかして、あの人が?)
冒険者協会の入り口で中の様子を窺っている人が、事前に聞いていた特徴と一致していた。
だがその様は、まるで初めてパーティ募集に来た人がソワソワしながら相手を待っているようで、朔が勝手に想像していた「嘘をついて女の子をひっかける詐欺師」というイメージが崩れていく。
(って、こんなことで騙されちゃダメだ!)
もしかすると、これも相手の作戦かもしれない。
何しろ相手はパーティ募集にあんな嘘八百を書くような人だ。
何を仕掛けてきてもおかしくはない。
「あ、あの! パーティ募集をされていた、篠塚さんですか?」
風流に声をかけながら、朔の心の中は静かに燃えていた。
(――わたしは絶対、騙されたりしないんだから!)
秒で騙されそう
前書きには適当書きましたが一応気力が続く限りは毎日更新予定です
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