43.ファーストコンタクト
どう考えてもストーリーに全く関係ない部分を三回も書き直してたらこんな時間に……
――すごいです係。
それは、最後のフロンティア。
スキル効果のせいでソロだとドロップ品が手に入れられない俺に残された最後の希望だ。
俺はかなりこのパーティ募集にかけていたのだが、反応は思わしくなかった。
「戦闘も探索も全部やるからただついてきて『すごいです!』って言ってくれるだけでいい」という破格の募集のはずなのに、なぜかしばらく応募どころか問い合わせすらなかったのだ。
……だからこそ、この人は絶対に逃がせない。
俺は待ち合わせ場所である冒険者協会に向かいながら、もう一度スマホで応募者の情報を見る。
今回応募してくれたのは、「冒険者養成学校」と呼ばれるダンジョン教育に力を入れた学校に通う学生らしい。
顔写真などはもらっていないが、待ち合わせでもその学校の制服を着てくれているらしいので、おそらくはすぐに見つけられるだろう。
一体どんな子が応募をしてきてくれたのか。
俺はワクワクする気持ちを隠さずに冒険者協会の中を覗き込み、
「……え?」
彼女を見た瞬間、俺の時は凍りついた。
確かに、確かに制服を着た女性の姿は、一瞬で見つけられた。
いや、むしろめちゃくちゃ目立つため、見つけられない方がおかしいくらいだった。
それは、いい。
だが、問題なのはその「制服の女性」があまりにも俺の想像とかけ離れた姿をしていたことだった。
確かに制服は制服なのだが、彼女が着ているセーラー服は明らかにサイズが合っておらず、パッツンパッツン。
無理矢理押し込められた胸部はもはや水着かってレベルでその身体の線を浮かび上がらせてるし、その煽りを受けてあまりにも布地が足りないためにヘソ出しに。
もともとミニのスカートはさらに短くなり、太ももをほとんど露出させているだけでなく、ほんの少しでも風が吹けば……いや、ただ普通に歩いただけでその奥が覗いてしまうだろう。
つまり、まあ、なんというか――
――紛れもない痴女が、そこにはいた。
(痴女!? 俺の最初のパーティメンバー、痴女なの!?)
いや、そもそもだ。
年齢が明らかに申告と違う。
十七歳の学生という話だったが、彼女の年齢はどう甘く見積もっても二十代前半。
制服もどう見てもコスプレにしか見えないというか、はっきりと言えば十八歳未満はお断りな店の……。
「――チサトさん! 何をしているんですか!」
しかし、幸か不幸か、俺が彼女と話をする機会はなかった。
いつもの受付のお姉さんがやってきて、痴女……いや、少しばかり服のサイズを間違えてしまっている女の人に近付いて、その腕を取ったのだ。
「え? あ、や、何って、ただ人を待って……」
「人を……? まさか客引き、ですか!?」
「え、え?」
痴女の人の返答に、受付のお姉さんの眉間のしわが深くなる。
「いいですか? 協会に冒険者のプライベートに干渉する権利はありませんが、冒険者協会は未成年も利用するんです! そんないかがわしい格好でうろつかれては困ります!」
「い、いかがわし……!? ち、ちがっ! わ、私はただ、ワンチャンに賭け……」
「とにかく話は奥で聞きます! さっさとその猥褻物をしまってください!」
「わ、わいせ……!? あ、待っ――」
呆気にとられる俺の前で、俺のパーティメンバーになるはずだった痴女は、ずるずると奥に引きずられていってしまった。
痴女の人がどこか哀愁を感じさせる様子で奥の扉にドナドナされるのを俺は呆然と見送っていたが、やがてハッと我に返る。
(ど、どうすりゃいいんだ。これ)
確かに彼女は痴女だが、俺のパーティを希望してくれた唯一の人だ。
彼女以外にパーティメンバーのあてはない。
それに、そういえばさっきの痴女、どこかで……。
「あ、あの! パーティ募集をされていた、篠塚さんですか?」
だが、そんな俺に、今度は背後から声がかけられた。
俺が驚いて振り向くと、そこにはダンジョンでもよく見かける制服を着た、高校生くらいの少女がいて、
「――は、はじめまして! わたしが『すごいです係』に応募をした、宇津木 朔です!!」
緊張した様子で俺に向かってペコリと頭を下げたのだった。
チサトさんの黒歴史がまた一つ……
ということで、無難なすごいです係でした!
次回はダンジョン探索(の予定)です!




