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41.追放系ヒロインとパーティ募集

ここまで素直なのはなろうの主人公の中でも割と少数派な気がします


「――来たな、役立たず! 今日限りで、お前をこのパーティから追放する!!」


 そうやって、宇津木うづき さくが組んでいたパーティから一方的に追放を言い渡されたのは、昨日のことだった。

 朔は呆然としたまま家に帰りつき、その日はそのまま眠ってしまった。


(……やっぱりわたし、才能ないのかな)


 朔は生まれつき、〈幸運〉と〈応援〉という二つの固有スキルを持っていた。


 一つ持っていることすらめずらしい固有スキルを二つも持っているのは、ダンジョン探索を行う上での大きなアドバンテージになる。

 冒険者への憧れもあって、親元を離れて冒険者養成学校に入ったものの、結果は芳しくなかった。


 固有スキルと本人の適性から朔は支援役への道を選んだのだが、ダンジョン攻略においては補助系クラスの需要はほとんどなかったのだ。

 パーティの人数の上限が六人と定まっているのに加えて、パーティ人数が少ない方が一人に入る経験値や成長する能力値が大きくなるという調査結果が発表されたことで、明確に火力貢献をしない補助系職業への風当たりは強くなった。


 魔法使いや僧侶への転職も考えたが、朔には残念ながら支援以外の魔法にも、ついでに近接戦闘にも全く適性はなかった。

 それでも必死の思いで支援役として頑張ってきたが、結局待っていたのはパーティ追放という結果だった。


「こう、なったら……」


 朔は一人、覚悟を決めた。

 背に腹は代えられない。


(大人の冒険者の人と組むのは、ちょっと怖いけど……)


 通常、冒険者養成校の生徒は、学内パーティを組むのが普通だ。

 だが、一般の冒険者と組むことも一応は許可されている。


 どうにかして新しいパーティに参加させてもらうため、彼女は冒険者協会のパーティメンバー募集に頼ることに決めた。


 冒険者協会のメンバー募集には登録にステータスカードが必要なので、身元が確かで情報に嘘がない。

 何か問題があっても協会が間に入ってくれるので、もしもの時もある程度は安心……と、養成校の授業でもやっていた。


(わたしでも、なんとかなりそうな募集があれば……)


 祈るような気持ちで、シンジュクの冒険者募集のページを開く。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【募集する役割】

・魔法使い

物理に耐性のある敵に対して決定打のある人材を募集します。



【必須条件】

・攻撃魔法スキル

攻撃魔法が使えるなら種類は問いませんが、アンデッドが出るダンジョンを攻略予定のため、炎魔法の使い手は特に歓迎します。



【推奨する能力】

・範囲攻撃魔法

集団に対しての魔法があれば特に優遇します。



【報酬】

ダンジョンアタックで得た利益の10分の1

(働きに応じて応相談)



【募集者パーティ情報】

ランクCパーティ バーニングパワー

戦士   LV40

剣士   LV40

武闘家  LV39

盗賊   LV37

僧侶   LV35


前衛三、中衛一、後衛一のパーティです。

厚い前衛陣でガンガン押していく形で進んできましたが、集団や物理に強いモンスターに苦戦しています。

ランクBへの昇格のため、攻撃魔法の使えるメンバーを募集します。



【探索ペース】

日曜のみ休みで、それ以外の日は主に九時~十八時までダンジョンアタックをしています。

今はBランクダンジョンを攻略中のため、泊まり込みになることもあります。



【アピールポイント】

メンバーは全員二十代の若手で、やる気だけはどこにも負けません!

実績はまだまだですが、アットホームでやりがいのあるパーティです!



【一言】

本気で“上”を目指す人を求めています!!

君もオレたちと一緒に、青春の汗を流してみませんか?

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「う、攻撃魔法……」


 最初に目についた募集は、魔法使いの募集だった。

 それももちろん、朔のような補助魔法使いではなく、攻撃魔法使い限定だ。


 それからもいくつかの求人を見るが、どれも募集しているのは前衛や攻撃魔法使いばかりで、支援役を募集しているような募集はなかなか見つからない。


(やっぱり、もう、ダメなのかな……)


 絶望感に、泣き出しそうになる。

 これでダメだったらあきらめよう、と心に決め、朔は支援役の募集がないか絞り込み検索をかける。


 必死の思いで画面に見入る。

 だが無情にもあれほどたくさんあった募集は一瞬のうちに消え去り、「やはりダメか」と彼女が目を伏せかけた時……。


「あった!?」


 朔は思わず画面に向かって身を乗り出す。

 高鳴る胸を抑え、一件だけ検索に引っかかったその募集を開く。


 そこには……。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【募集する役割】

・すごいです係

探索についてきて、こちらが何かする度に「すごいです!」と褒めてくれる人を募集します。



【必須条件】

・お世辞がうまいこと

自然に、かつ全力で褒めてくれる人を歓迎します。



【推奨条件】

・冒険者として強くなりたくないけどお金だけはほしい方

・安全にダンジョンアタック気分を味わいたい方

パワーレベリングになるので、能力値は上昇しない可能性が高いです。

「別に能力値なんて上がらなくてもいいや」という人だけ来てください!



【報酬】

ダンジョンで手に入ったものを人数で山分け



【募集者パーティ情報】

ブレイバー  LV15(ランクD)


ソロです。

Aランクまでのモンスターなら一撃で倒せますが、スキルに副作用があってソロではドロップアイテムが手に入りません。

戦闘とマップ探索と索敵と罠解除は自前で行えるので、パーティを組みつつ話し相手になってくれる人を探しています。



【探索ペース】

ダンジョンアタックは休日以外は一回三時間程度。

昇級まではCランクダンジョンを中心に、一日一ダンジョン制覇ののんびりペースでやっていく予定です。



【アピールポイント】

安全に配慮し、ダンジョン突入前に脱出石を支給します。

モンスターや罠は見つけ次第破壊する予定ですが、少しでも危ないなぁと思ったらそれを使って逃げてください。



【一言】

極論パーティ組んでついてきてくれればそれだけでいいんですが、どうせならちやほやされたいのでこの条件で募集しました!

性別年齢は問いませんが、出来れば可愛い女の子にキャーキャー言われたいです!

よろしくお願いします!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「…………」


 あまりの求人内容に、朔は三秒ほど、画面の前で意識を失っていた。

 それからようやく我に返った朔は、募集内容を二度見して、それでも足りないので三度見して、そして、



「ええと……キャバクラ、かな」



 とつぶやいて、そっと求人ページを閉じたのだった。

熱いタイトル回収!





流石にほっときすぎたので、最後に閑話を少し書いたら「主人公じゃない!」の方に戻る予定です

次回、

「【例の新人】トーキョー区新人冒険者発掘スレ その212【追跡中】」

を、お楽しみに!

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成長率底辺のゲームキャラになった主人公が、裏技を使って英雄になっていく話です
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― 新着の感想 ―
[良い点] 爆笑しちまったぜ……
[一言] すごいです係って、冒険者パーティで初めて見た。 能力値上がらないのは、来てくれないのではないか、風流、と思った。 クスッと笑った。 ウスバーさんの技量に脱帽。 すげえ。 ボクもいつかこ…
[一言] 直前の糞ブラック求人と比べてすら明らかに地雷な欲望に素直すぎる求人草 こんなんでまともな人が来るわけねーだるぉぉん!? まぁ実情は報酬と労働が(良い意味で)釣り合ってないアホほどホワイトす…
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