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40.フールの選択


(……懐かしいなぁ、アリア団長)


 厳しくも優しい俺の初めての仲間。

 彼女のことを思うと、まるで胸の中をさわやかな風が吹いたような気持ちになる。


 殺伐とした異世界勇者生活における数少ない「いい思い出」の一つだと言えるかもしれない。


(ただ、なぁ……)


 しかし、あんな風に仲間になってくれたアリア団長も、ほかの仲間たちも、結局は魔王討伐の旅にはついてこれず脱落していった。

 魔族の領域の奥に進むにつれ、どんどんインフレしていく敵と俺の力についてこれなくなったのだ。


 確かに最初は、俺よりも彼らの方が強かった。

 けれど、勇者召喚によって呼び出されるのは、「潜在能力はあるが、特別強大な力を持たない人間」。

 裏を返せば、最初は弱くとも鍛えれば誰より強くなるのが保証されているという訳だ。


 これには事情があって、世界間の転移には大量のエネルギーが必要で、さらに転移対象が元から強い力を持っているとさらに膨大な魔力が必要になる。

 瀕死の人間を優先的に引っ張ってくるのもそのためで、このままだと死んでしまう人間を召喚で救う、という道義的な面のほかに、弱った人間の方が召喚コストが少ないから、という理由があるらしい。

 だから「最初は弱いが伸びしろのある」人間を呼び出すことで、異世界から勇者を呼ぶ、なんて無茶を可能としているんだそうだ。


 特に、俺の能力は激しい訓練の日々にぴったりとハマり、俺は一年で過去の勇者たち全てを超えるほどの力を身に着けた。

 過熱する魔族との戦いに、仲間は一人、また一人と減っていき、召喚から一年経ったくらいのところで、旅の最初からずっとついてきてくれたアリア団長も、ついに戦えなくなった。

 別れの日の、初めて見た彼女の泣き顔は、いまだに目に焼き付いている。


(結局、最後まで俺についてきてくれたのはフォルスだけだったんだよな)


 勇者召喚を行った召喚者には、三つの技能が備わる。


 一つは、勇者を元の世界に帰し、勇者召喚を終わりにする「送還」能力。

 二つめに、勇者のいる場所まで一瞬で移動出来る「転移」能力。

 最後に、勇者とのつながりからその力の一部を使える「共有」能力。


「共有」で流れ込む力は大本の勇者の十分の一程度だが、それでも旅が進むにつれ、フォルス王女は仲間の誰よりも強くなった。

 流石に本格的な戦いの間は避難してもらったが、安全な場所で待機して「転移」の能力で戦いが終わった俺に合流する、というのが彼女のスタイルだった。


 それでも、彼女が命の危機に晒されることは何度もあった。

「転移」は移動距離に応じて魔力を消費するのであまり俺から離れられず、戦闘に巻き込まれることも多かったからだ。


 だが俺が何度帰るように言っても、その度に「あら。フール様を支えるのはわたしの責務で、特権ですよ。絶対に、帰ったりしません」と不敵に笑って決して俺から離れようとはしなかった。


(だけど……それで救われたのも確かだ)


 あの時も、本当に戦力だけのことを考えるなら、フォルス王女の同行を断って一人で旅を続けた方が効率はよかっただろう。

 だけど、フォルスがついてきてくれたことで、俺の「心」は救われた。


 だったら……。



「ちょっと待ってくれ、ジュン」

「ん?」


 ――ソロかパーティか。

 ――本気か手加減か。


 究極の二択を迫ってきたジュンに、俺は待ったをかける。


 勇者時代と同じように効率だけを考えるなら、選択肢は二つしかないのかもしれない。

 だけど、今の俺は違う。


 俺は勇者じゃないし、世界は三年で滅んだりしない。

 なら、俺はもっと自分に素直に、もっとワガママになってみてもいいんじゃないか?


「ジュン。確か冒険者協会には、パーティメンバーの募集も出せるんだよな」

「あ? ああ、まあ、そうだけど……」


 そうか。

 だったら……。



「――これが、俺の答えだ!!」



 俺が最後に出した結論、それは……。


うーん、我ながら完璧な話数調整





次回、第41話

「運命の出会い!? メインヒロイン登場!!」

を、お楽しみに!

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成長率底辺のゲームキャラになった主人公が、裏技を使って英雄になっていく話です
主人公じゃない!

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― 新着の感想 ―
救う? 命の足元を見てれいぞくさせるの間違いね
[一言] 魔力ためて追ってきそう
[一言] 過去、ここまでわかりやすい伏線があったろーか
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