4.救援
驚きの三連続更新!
氷の槍に胸を貫かれた巨人は、数秒ほど経って光の粒子となって消えた。
(ひとまず、なんとかなった……か?)
さしあたっての命の危機は去った。
だが、異常事態なのは変わりがない。
(いつから日本は、巨人が道を歩くようになったんだよ)
あらためて、辺りを見回す。
壊れているものは多いとはいえ、ファンタジーとは程遠いビルの姿がちらほらと見える。
(ここは本当に日本、なのか? まさか、俺がファンタジー世界に召喚されたことがきっかけで、日本と異世界がくっついた、なんてことは……)
昔、何かのアニメで見たことのある設定が頭をよぎったが、しかしそれでも説明がつかない。
(いやいや、だとしても、死体が消えるってのはどういうことだよ)
俺が勇者をやっていたネクストマーチにはモンスターと呼ぶしかない怪物はいたが、そのモンスターだって倒したら消えるなんておかしな生態はしていなかった。
おかしいと言えば「ステータス」だってそうだ。
俺が「ステータスエフェクト」と口にしてから出現した、ゲームのステータスとしか思えないような画面と、それによって使えるようになった氷の力。
それは、俺がいた異世界ネクストマーチにおいてもありえないことだ。
(ワッケ分かんねえ! 日本でもネクストマーチでもない。だったらここは、どこなんだ?)
湧き上がる疑問に押しつぶされそうになり、俺は助けを求めるように辺りを見回す。
特に考えての行動ではなかったが、しかしそこで、俺は思いかけないものを見つけた。
「人!?」
巨人がやってきた方向に、人らしきものが倒れていた。
慌てて駆け寄る。
(ボロボロだ。でも、息はあるな)
倒れていたのは、俺と同世代くらいの女性だった。
ひどく疲弊しているようだが、奇跡的に目立った外傷はない。
(しかし、この服……)
彼女が着ているのは、ファンタジーの魔法使いそのもののひらひらとした衣装だった。
なのに女性の顔立ちは、純粋な現代日本人のように見える。
つまり……。
つまり……どういうことだ?
女性を抱えたまま混乱する俺の耳に、かすかな物音が響く。
同時に、明らかに連携の取れた動きで、俺の前に数人の人影が飛び出してくる。
彼らは素早く俺たちに駆け寄ると、
「よかった! 生き残りがいたか!」
「おおいこっちだ! 早く救護班をまわしてくれぇ!」
そのまま神輿でも背負うかのような勢いで俺たちを担ぎ上げ、
「え? いやあの……えぇぇぇぇ!?」
何がなんだか分からないままに、俺は謎の集団に救助されてしまったのだった。