表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/89

34.決闘


 いまだに戸惑っている様子の少年に、「いやぁ、魔法禁止の決闘を認めてくれてよかったぜ!」と押し切って、練習用の木刀を押し付ける。

 さわやかな擬態をしながらも、徳島は内心では邪悪な笑みを浮かべていた。


(オレはバカだったよなぁ! あいつに魔法を使わせないためには、こうやって最初からルールで封じておきゃあよかったのによ!!)


 冒険者協会が黎明期に定めた決闘のルールは、非常に前時代的なものだ。

 とにかく血の気の多い冒険者が命を落とすことがないように、と考えられたものだが、魔法を使えないようにしているのにスキルが使えるため、近接戦闘を得意とする者に圧倒的に有利だったり、武器の制限が刃の有無なので、鈍器を使う冒険者に有利だったりと、色々と不備がある。


(どっちにしろ、オレは破滅なんだ。だったらせめて、ムカつくこいつだけはぶん殴っておかねえとな)


 あとは嵌められたことに気付いた少年が騒ぎ出す前に、決闘を始めればいい。

 試合用の装置を作動させれば、会場は結界によって区切られ、中からは脱出出来るが外からは干渉出来ない空間となる。


 そう思い、徳島は装置の方へ歩き出したのだが、


「……オイ、なんのつもりだ」


 結界発生装置の前に、召喚士の女性が両手を広げて立ちふさがった。


「こ、こんな決闘、バカげてます! 今すぐ、中止してください」


 だが、そう口にする女性の足は震えている。

 それを見て、徳島は意地悪く唇を歪めた。


「はっ! いつもオレらの後ろで隠れて震えてた『泣き虫メイちゃん』が言うようになったな、オイ!」

「い、いくら相手が徳島さんでも、人が命を落とすかもしれないという場面で、止めない訳にはいきません!」


 それでもあくまで立ち塞がろうとする女性に、徳島は苛立ったように舌打ちをすると、


「どけっ!」


 乱暴に召喚士の女性の身体を押しのけ、装置を作動させた。


「待って! 待ってください、徳島さん!」


 それでも召喚士の女性は食い下がろうとするが、発生した結界が彼女を押しのける。

 こうなればもう、外からはどうすることも出来ない。


(さぁ、お楽しみタイムだ! これまで散々コケにされた借り、存分に返させてもらうぜぇ!!)


 三、二、一、と試合までのカウントダウンが進む中、愛用のメイスを握りしめて、ウキウキと試合開始を待つ。

 召喚士はまだ何かを言っているが、徳島はもうまともに聞いていなかった。


「資料を見てなかったんですか!? あなたは、勘違いしてるんです! 彼は……」


 そして、試合開始の合図が鳴り、






「――彼は、魔法使いじゃない! 『魔法剣士』なんです!!」






 その忠告が耳に届いた時には、全てが終わっていた。


 試合開始と同時。

 徳島が握っていたメイス、Aランクダンジョンのドロップ武器が、真っ二つになって落ちる。


「……ひょっ?」


 それが、少年の持つただの木刀(・・・・・)によって斬られたのだと理解した時、徳島はようやく悟った。



 ――自分は、この少年に絶対に勝てない。



 なぜ、たかが魔法を封じたくらいで、有利になったと錯覚してしまったのか。

 なぜ、これほどまでに格の違う相手に、張り合おうなんて気を起こしてしまったのか。


「あ、ぁ……っ」


 走馬灯のように徳島の頭に後悔がよぎり、もつれる舌でなんとか降参の言葉を紡ごうとしたが、それは遅すぎた。


 なぜなら、



「あ、ぎゃああああああああああああああ……へぶっ!?」



 次の瞬間、徳島の身体は錐もみ回転をしながら飛んでいき、試合会場の結界を突き破って、管理ダンジョンの壁に頭から突き刺さっていたのだから。

 そうして、徳島の意識と未来が深い深い闇に吞まれる、その直前に、



「よし! うまく手加減出来たな!」



 という少年のはしゃいだ声が、追い打ちのように徳島の耳を打ったのだった。

成長していく主人公!






次回がトライアル編エピローグ

果たしてフールくんは無事にトライアルに合格することが出来るのか!?


次回、第35話

「お祈りメール」

ご期待ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
成長率底辺のゲームキャラになった主人公が、裏技を使って英雄になっていく話です
主人公じゃない!

書籍二巻、コミック二巻ともに発売中!
二巻
― 新着の感想 ―
(一撃で殺してないなら)手加減できてるな!ヨシ!! 魔王とか言うやらなきゃ殺られる存在を相手にしてきたから、攻撃=死のサツバツとした世界からエントリーしてきたからね、しなやす精神も仕方ないことよ
[一言] お、5月もいた。
[一言] 異世界勇者ステにこの世界のステが盛られてるよな、これ。 協会さーん。高レベル域のソロ探許可はよ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ