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31.バブルバタフライ

「主人公じゃない!」の次のエピソードのステータス計算がアホほどめんどくさくて、今めちゃくちゃ後悔してます



前回の話に投稿ミスがあったため、投稿直後に読んだ方は話がつながっていない可能性があります

「あれ?」と思ったら申し訳ないですが前の話を確認してみてください


「……それで、『準備』はしっかり出来たのか?」


 後ろを歩く二人に背を向け、こっそりと寄ってきた研究員風の男に、徳島は小声で尋ねる。


「は、はい。〈ミスリルロック〉の上に蜜を撒いたら止まりに来ました。……で、ですが、いいんですか?」

「あん?」


 すると、男はおずおずとうなずいたが、今度は逆に、徳島に問いかけた。


「『蝶』はうちのクランの秘密兵器ですよ。リーダーも外部の人間には絶対に見せるなって……」

「ハッ! あんなガキに、あの『蝶』の価値が分かるかよ! 心配ねえ! 責任は全部、オレが取る!!」


 ドン、と胸を叩いて研究員を安心させながらも、徳島の内心は毒に満ちていた。


(チッ! ほんとに使えねえ奴らばっかりだぜ)


 内心でそう吐き捨てながら、奥の部屋に集めたモンスターに思いを馳せる。


 ――〈羽ばたきの大空〉は、シンジュク区に数ある冒険者クランの中でも、「内政」に力を入れたクランだ。


 ほかの有名クランは主にクランリーダーが圧倒的な戦力を持ち、メインパーティのダンジョンアタックによってその名を上げるものが多かったが、〈羽ばたきの大空〉は違う。


〈羽ばたきの大空〉のクランリーダーは、確かに高ランク冒険者ではあるものの、突出した強さは持たなかった。

 しかしその代わり、時流を見極める目、先見の明があった。


 短期的にはあまり戦力にならない〈魔物使い〉や〈召喚士〉などを積極的にクランに勧誘、モンスターの飼育や研究の分野に力を入れ、大きな成果を上げたのである。


 その道のりは、決して平坦ではなかった。

 徳島をはじめとした武闘派のクラン員の反対を押し切り、無害なスライムの養殖からスタートし、様々な試行錯誤を重ねながら研究を推進。


 その集大成として、ランクAのモンスターであり、岩とほとんど見分けのつかないモンスター〈ミスリルロック〉を捕獲。

〈ミスリルロック〉からミスリルを安定して収穫出来ると証明したのは〈羽ばたきの大空〉の大きな功績とされ、それによって得られた収入と知名度は〈羽ばたきの大空〉を有名クランまで押し上げた。


 そして、〈羽ばたきの大空〉の研究班が今力を入れて研究しているのが、Eランクモンスター〈バブルバタフライ〉だ。

 最弱に近い戦闘力を持つ、この非力な蝶に、なぜ彼らがそこまで固執するのか。


 徳島も最初、その価値が分からなかった。

 だが……。


(リーダー! アンタはやっぱ正しかった! これであの生意気な小僧に一泡吹かせられるんだからな!)


 いやらしく笑いながら、徳島はそんな都合のいいことを考える。


 この〈バブルバタフライ〉というモンスターは、戦闘力がほぼない代わりに、鱗粉によって冒険者に毒の状態異常を与える魔物だ。


 特徴は、透き通ったような身体と、限りなく低い魔力。

 ゆえに肉眼であっても、スキルによる探知であっても、その姿を捉えることは至難だ。


 そう、〈羽ばたきの大空〉はその蝶の「隠密性」に着目したのだ。


 そのステルス性能はすさまじく、徳島はおろか、あの〈盗賊の道〉を作った盗賊でさえ、〈バブルバタフライ〉を発見するのは困難を極める。


 今は大金を投じて〈バブルバタフライ〉を養殖し、ダンジョンの偵察などに使えるように研究を進めている。

 この〈バブルバタフライ〉は、いわば〈羽ばたきの大空〉の秘密兵器なのだ。


(しかも、それだけじゃねえぞ)


 宝箱ではなく石に化ける魔物〈ストーンミミック〉

 ダンジョンの水場に紛れ込む魔物〈ジェルスライム〉。

 気体であるがゆえに目視不可能な魔物〈スチームエレメント〉。

 気温によってその色を自由自在に変える魔物〈レインボーループ〉。


 クランで研究中のものの中で、特に発見が難しそうなものを片っ端から集めさせた。


 予備知識のある徳島であっても、至近距離から十分に観察しないと判別することは不可能だ。

 魔物についての知識もなく、氷の魔法しか能のないこの少年には絶対に、万が一にも発見出来ないだろう、と徳島はほくそ笑む。


(だが、念には念を、だ)


 徳島はその部屋から十メートル離れた場所、角度的に部屋の中が見えない位置で立ち止まると、前に進もうとする少年を止めた。


「準備はいいか? なら最後の『索敵試験』を始めよう。ルールは簡単、あの部屋にいるモンスターの数を当てるだけでいい。ただし……」


 そこで徳島はにやりと笑うと、後出しの条件を告げる。



「――これ以上、部屋に近付かずに、な」



 あまりに異常な条件に呆然とする召喚士を前に、徳島は栄光の未来を思い浮かべ、一人昏い笑みを浮かべたのだった。

〈氷神覚醒〉を封じられたフールにこの難局を乗り切ることが出来るのか!?

そして、視界が通らない部屋を「視る」ためにフールが使った驚きの技能とは?



次回、第32話

「唸れ〈氷神覚醒〉! 全てを暴く氷の鏡!!」

を、お楽しみに!


※次回予告の内容は開発中のものであり、実際の製品とは異なる場合があります

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― 新着の感想 ―
[気になる点] これもう、唯々諾々と従ってる主人公が勇者とかじゃなくてただのアホだろ・・・
[一言] 「準備はいいか? なら最後の『索敵試験』を始めよう。ルールは簡単、あの部屋にいるモンスターの数を当てるだけでいい。ただし……」そこで徳島はにやりと笑うと、後出しの条件を告げる。「――これ以上…
[気になる点] 「説明されても、突出すら力が和を乱す。」以外に徳島がこだわる意味がわからないです。 内政に力を入れ、時流にのるクランの副リーダーならなら尚更。 この先無能を晒す展開かな?
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