18.レベルアップ
前回長かったのでもう一話更新です!
と、綺麗に終わればよかったのだが……。
「ありえねえ。魔法一発でダンジョン全部の敵を倒しちまうとか、ほんとありえねえ……」
ぶつぶつと壊れたラジオのようにつぶやくジュンと俺は、いまだに薄暗い地下鉄ダンジョンの中にいた。
「まあ、その……所詮低レベルダンジョンだし、ね?」
「だからってなぁ! 一撃でダンジョン全部を撃ち抜く魔法とか、どんだけの射程があれば……」
そう興奮して言ってから、ジュンは「はあ」とため息をついて、パンパンと自分のほおを張った。
「いや、ジュライの奴が認めた新人だもんな。アタシの認識が甘かったってことか。そりゃ、こんだけ強ければ初心者ダンジョンなんかで緊張なんかしないワケだよ……」
ジュンはどこか恨みがましい目で俺を見ていたが、気持ちは切り替えたらしい。
「ま、新人ってのも確かだろうからな。戦闘じゃもう追いつかれてるかもしれないが、それ以外の知識をビシバシ叩き込んでやるから覚悟しろよ!」
「あはは。お手柔らかに」
まあ、さっきまでの死んだ目をしたジュンよりは、今の方が付き合いやすい。
「じゃ、まずはレベルアップの確認だな。フール、お前はレベル上がったか?」
「ええと……あ、二つ上がってるみたいだ。十四になってる」
俺がそう言ってステータスカードを見せると、ジュンは顔をしかめた。
「見てるだけでゲロ吐きそうになるくらいやべえ数値だな、ってのは置いといて、そいつは妙だな」
「妙?」
上がっちゃまずいのだろうか、と首をかしげていると、ジュンは自分のステータスカードを取り出した。
「うげ。やっぱりアタシまでレベルが上がってる。しかも、二つだ」
「ええと、おめでとう?」
「お、おう、ありがとう! なんかこういうのって嬉しいな。……じゃ、なくてだな!」
ノリ突っ込みのようなことをしてから、ジュンは腰に手を当ててうなった。
「アタシに経験値が入ったのは、フールとパーティを組んでたから。つまりはおこぼれだ。なのにアタシとお前のレベルアップの数が同じってのはおかしいと思わないか?」
「それは、確かに」
おこぼれでもらった経験値は、俺が手に入れた経験値よりも少ないはずだ。
そして、レベル自体も俺よりもジュンの方が高い。
本来なら、ジュンよりも俺が大量にレベルアップをしていないとおかしいはずなのだ。
「……もしかすると、だが、その〈超成長〉って固有スキルの効果かもしれねえな。そのスキルの効果が、『レベルアップを遅くする代わりに能力の上昇を大きくする』って効果だとすればつじつまが合う」
ジュンはそう言ったあと、はぁぁともう一度ため息をついた。
「フールと一緒にいると、こっちの常識が粉々になってく気がするぜ。もう何も面倒なもん隠してないだろうな」
じとっとした目でそう尋ねるジュンに、俺は「あはは」と誤魔化し笑いをするほかなかったのだった。