16.初めてのダンジョン
ひんやりとした地下鉄のホームの空気が、ほおを撫でる。
無人のホームは独特の雰囲気を醸し出していたものの、ここがダンジョンだ、と言われなければ、とてもそんな風には思えなかっただろう。
「いいか? お前も事前に調べてきたとは思うが、確認するぞ」
そんな中、流石に緊迫感のある顔をしたジュンが、俺を守るように前に立ち、辺りを警戒しながらも話し始める。
「このダンジョンは、地下鉄型。宝箱や罠は一切なく、出現モンスターも小鬼型……つまり、ゴブリンやコボルトしか出てこない。だから目的は、可能な限りのモンスターの討伐になる。……わっかりやすいだろ?」
俺の緊張をほぐそうというように、ジュンがいたずらっぽく笑った。
「……っと、噂をすれば、だ。早速のお客さんだぜ」
地下鉄の線路の奥。
暗闇の中からヨタヨタと走る三つの小さな影。
「……ゴブリン。最弱とも言われてる小鬼モンスターだ。つってもステータスエフェクトがない一般人よりかはずっと強い。冒険者の試金石、ってところだな」
その姿を認めると、ジュンはゴブリンを刺激しないようにそっと立ち位置を後ろに移す。
「このダンジョンは今日はアタシたちの貸し切りだし、ほんとにピンチの時にはアタシが助けてやる。だから……」
そして、俺の背後にまで回ると、
「――存分に、暴れてこい!! あのジュライの奴が目をかけたって力、見せてみろよ!」
そう言って、俺に発破をかけるように、俺の背中を押したのだった。