15.ダンジョン突入
前回短かったのでもう一話更新!
「……ここだ」
そのダンジョンの入り口は、見た目には何の変哲もない、地下鉄に向かう階段だった。
だがその入り口にはものものしいテープが引かれ、そこには武装した見張りらしい女性が立っていた。
ジュンは「ちょっと待ってろ」と言うと、自分から見張りの女性に近づいて、カードを差し出した。
「D級冒険者の篠塚 風流と、その引率のB級冒険者の追立 ジュンです」
「はい。申請は受理されています。今日はお二人以外にここを探索する方はいらっしゃらないので自由にやってくださって大丈夫ですよ」
「そうですか。ありがとうございます」
それで手続きは終わったのか、ジュンは俺のもとに戻ってきて、「行こうぜ」と地下への階段へ歩き出した。
しばらくその横顔を無言で見つめてると、不思議そうに見つめ返してくる。
「ん、どうした? やっぱりビビっちまったか?」
「あ、いや。ちゃんと敬語使えるんだなって」
俺が言うと、ジュンは顔を真っ赤にして肩を怒らせた。
「う、うるせえな! この口調は同業者用なんだよ!」
「同業者用?」
さらに追及すると、ジュンは背伸びしながら忌々しそうに俺の頭をぺコンペコンと叩く。
「アタシはこんなナリで、しかも女だろ。だから、冒険者相手には舐められないようにガツンとやるようにしてんだよ!」
「そ、そうなんだ」
ガツンとやれているかはともかく、若いころから冒険者をやっているジュンには、やはりそれなりの苦労があるらしい。
「って、こんなこと話してる状況じゃねえからな。今から本当に、ダンジョンに潜る。初心者用ダンジョンだからって、油断してんじゃねえぞ」
「……ああ。分かってる」
俺だって、異世界ではそれなりに修羅場をくぐってきた人間だ。
ふざけていい時と悪い時の区別はつけている。
「はぁ。ならいい。……行くぞ、楽しい楽しいダンジョンアタックの始まりだ!」
ジュンの音頭と共に、俺たちはついに地下鉄ダンジョンへと足を踏み入れた。