12.ダンジョン
新章突入ボーナス二回目です!
この世界では、〈ダンジョンインパクト〉によって世界各地にダンジョンが発生した。
ただ、この「ダンジョンの発生」というのはダンジョンがニョキニョキと生えてきた、という意味ではなく、普通の場所が「ダンジョン化」したと言った方が分かりやすいのかもしれない。
つまり、今まで普通の場所だったところが、〈ダンジョンインパクト〉を機にダンジョンとして生まれ変わった、というのが実情だ。
なので、普通ダンジョンと言われて思いつくような洞窟型のダンジョンはむしろ少数派で、元の地形を残したダンジョンが世界には多く存在しているらしい。
世界最大規模とも言われるダンジョン区、このシンジュクダンジョンは、その筆頭だ。
ダンジョンになると、その場所の空間が歪んで広くなり、構造が複雑になる。
例えばビルのダンジョンであればもともと十階建てだったビルが百階建てになったり、トンネルのダンジョンであれば迷路化したり階層化したり、と様々だ。
「で、このシンジュク区第十一ダンジョンは、地下鉄型のダンジョンだ。特徴としちゃ道幅が比較的広く、脇道も少ない。下手に奇襲を受けたりする危険は少ないが、その分搦め手が通用しにくく地力が要求される、ってのが難点だな」
仏頂面で、追立さんがこれから行くダンジョンの特徴をつらつらと説明してくれていた。
一応事前に頭に入れていたその内容に相槌を打ちつつも、俺は話そのものよりも話し手の方に注意を向けてしまっていた。
「んだよ。アタシの顔になんかついてっか、新人?」
「いや、思ったよりちゃんと説明してくれるんだな、って思いまして」
「う、うっせえな! 仕事はちゃんとやるさ! ほ、ほら、カードよこせ!」
「え、はい」
俺がカードを渡すと、「ちっ! 冒険者が他人にほいほいとカード渡してんじゃねーよ。生命線だぞ」とかなんとか矛盾した文句を言いながら、俺のカードと自分のカードを合わせて何やら操作をした。
「ほら。フレンド登録しといたぞ」
「フレンド登録、って……」
「あぁ、アタシとフレンドじゃ不満か。だけどこのアタック中は苦情はうけつけねーぜ。アタシの引率中にお前に何かあったらアタシの評価まで下がっちまうからな。監視だよ」
追立さんは歯をむき出して獰猛に笑ったが、
「いやその、それ以前にフレンドってどういうのか知らなくて」
「お、おい! マジかよ! フレンドってのはなぁ……」
追立さんは焦った様子でフレンド機能のことを話し始めた。
設定次第ではあるが、相手のHPMPの残量やダンジョンに入っているかどうかが分かるらしい。
一通り話し終えた追立さんは、疲れたようにため息をついた。
「ジュライの奴、こんなことも教えてなかったのかよ」
「い、いや、すみません。誰かとダンジョンに潜ることなんて考えてなかったので……」
俺が頭を下げると、なぜか追立さんは頭をかきむしって苛立たし気に言った。
「ああもうクソ! その分じゃ、パーティ機能についてもろくに調べてないんだろ! いいか? パーティってのはなぁ……」
そうして俺のカードをもう一度取り上げると、カードから使える機能について、丁寧に説明を始めたのだった。