11.ジュン
新章開幕ボーナスで連続更新です!
「あ、よかった。篠塚様、こちらが今日の案内人の方です。どうか、自己紹介をお願いします」
「B級冒険者の追立 ジュンだ。しかたねーから、今日はお前のお守りをしてやる」
その不機嫌そうな少女は、言葉少なにそう名乗った。
「あれ……?」
このジュンという人の顔、どこか見覚えがある。
というか、つい昨日も近所の食堂で見かけたような……。
俺がそう思って目をぱちぱちとさせていると、それを察した受付の人が補足をしてくれる。
「追立様も篠塚様と同じ、冒険者支援宿舎に入っているんですよ」
「あ、やっぱり」
道理で見た顔だと思った。
そういえば隣の部屋にあいさつをしに行った時、門前払いを食らわせられたのがこの少女だったような。
「追立様は弱冠十七歳にしてすでにB級の資格をお持ちな、シンジュク支部きっての有望な冒険者なんですよ」
「やめろよ、ただ年季が入ってるってだけだ。中学一年の頃から五年間、ずっとダンジョン潜ってるんだからな。そりゃ、ランクくらいは上がるさ」
受付の人の言葉に、やはり追立さんはぶっきらぼうに返した。
やけに不機嫌そうだが、それでも仕事をこなそうという気はあるのか、俺の方を向いて話し出す。
「というワケで、アタシが案内人だ。案内たって別にあれこれ指示したりはしねえ。危なくなった時だけ助けてやるから、好きにやれや」
それだけを言うと、追立さんはさっさと出口に向かって歩き出してしまった。
途方に暮れる俺に、受付の人がそっと耳打ちしてくれた。
「追立様は同業者相手だと口は悪いですが、仕事はきっちりとなさる方です。初めてのダンジョンでの案内役として申し分はないですよ」
「は、はぁ……」
その言葉を聞き流しながらも、出来れば仕事もきっちりして、口も悪くない案内人がよかった。
そんな風に思ってしまった俺は、果たして我がままなのだろうか。
「ほら、さっさとついてこい。置いてっちまうぞ」
出口でそうやって俺を呼び立てる彼女を見ながら、俺はそんなことを思ったのだった。




