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二人で一人の剣姫  作者: 白玖
第六章 四色祭
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56 会食

「セラフィナ、俺達は青の国の友人に会いに行くけど、一緒に行くか?」

「姉さんに紹介するよ」


 会食が始まると、シグネとエドブルガは、青の国の王族が集まっている席へ行こうとしていた。

 3年前の四色祭で、親交を深めた相手が何人かいたのか。


「ありがとう。けれど私は先にソフィアに会いに行ってくるわ」

「分かった。それじゃあまた後でね」

「ええ、私も後でソフィアを紹介するわ」


 セラフィナも5ヶ月ぶりにソフィアと会えるのを楽しみにしていたのだ。

 この日を待ちわび、もはや逸る気持ちを抑えられない状態だ。

 セラフィナは、カリンを連れて、会場の人混みの中に消えていった。


 元から人数の少ない白の国は、更に人数を減らす。

 イオランダがステージ上で他の王と話をし、リツィアも他の国の王族の対応をしている為、残ったのはリシストラタと、フラマリオに抱えられたララージュだけだった。


「フラマリオ。私も知人に会いに行きたいのですが」

「駄目です。誰か1人は残っている必要があります。その1人にララージュ様を数える訳にはいきませんので」

「ですよね。誰か会いに来ないでしょうか。退屈です」

「あ、あのー……」


 誰かの呼ぶ声を聴き、2人はその方に振り返る。

 そこには褐色赤髪の少女と、その護衛騎士らしき男がいた。


「セラフィナと同い年くらいで、赤の国の姫。そしてセラフィナ様と色違いの髪留め……。あなたがソフィアですね? セラフィナの友達の」

「は、はい。セラフィナに会いに来ました」

「そうだったのですか。けれどセラフィナも先程、あなたに会いに行くと、赤の国の方へ行きましたよ」

「えっ……」


 どうやらソフィアは、セラフィナと行き違いになってしまったようだ。

 ソフィアもセラフィナと同様、早く会いたくて仕方がなかった為、とても残念そうな顔をしている。


「そうですか……ありがとうございます。私も行ってみます」

「待ってください。あなたがいないと分かればセラフィナも戻ってくるはずです。また行き違いになったら困りますし、ここで待っているといいでしょう」

「えっ、だけど……」

「遠慮しないでください。セラフィナが来るまで私が話し相手になりましょう」

「リシストラタ様が話し相手を欲しているだけでは?」

「余計なことは言わないでください。私はリシストラタ。セラフィナの叔母に当たります」

「と言うことは、セラフィナが小さい頃も知ってるんですか!?」


 リシストラタがセラフィナの叔母だと知ると、ソフィアの態度は急変して喰い付いた。


「小さい頃も何も、私はセラフィナの出産にも立ち会っていますからね。さて何から話しましょうか」

「ぜひお願いします!」


 ソフィアは本来人見知り気味な性格である。

 魔術に通ずる相手ならまだしも、それ以外の相手と話すと気後れしてしまうのだ。

 そんなソフィアが自分から他人に積極的に喰い付くなど、人生で初の事だった。


「ソフィア様の護衛騎士のカリスト殿ですね? セラフィナ様から話は伺っております。ソフィア様がお話の間は、このフラマリオがあなたのお相手をいたしましょう」

「いや、俺は別に……。今日は絶対に大人しくしてろって釘を刺されているし」

「申し遅れました。私の名はフラマリオ。セラフィナ様の護衛騎士であるカリンの兄であります」

「似てねぇな!?」


                    ・

                    ・

                    ・


「ふーん、あんたがソフィアが話してた友達ねぇ」

「セラフィナ・ホワイトボードと申します」

「知ってるさ。ソフィアが聞いてもいないのに話してくるからね。あの内気なソフィアが」


 セラフィナも、ソフィアと同様に、赤の国の王族に捕まっていた。

 話しているのは、エルザの第一子で長女のアデリンダ。

 そして第五子で三男のマルムーラだ。


 アデリンダは、セラフィナの事を快く受け入れてくれた。

 しかしマルムーラは、不満げな顔をしている。


「ふん、根暗が舞い上がりやがって、ウザったいっての。お前もソフィアと同じで根暗なんだろ? 部屋に籠ってばっかだから、そんなヒョロヒョロなんだ」

「あ?」

「やめろマルムーラ。すまないな白の姫。礼儀のなってない弟で」

「いってぇ……」


 アデリンダは、マルムーラに拳骨をくらわせ諫めると、代わってセラフィナに謝罪した。


「赤の国では、他の国と比べて魔術が浸透していない。だから魔術ばかりに精を出しているソフィアを快く思ってない者が多いんだ。正直、オレも魔術に関してはさっぱりだ」

「けれどソフィアの事を話すあなたは、嬉しそうでしたよ」

「中々に目聡いな。思う所がない訳ではないが、それでも姉として、妹の成長は嬉しいものさ」

「俺だって、ソフィアの兄だぞ! 俺はソフィアを思って、もっと外に出るようにって――」

「マルムーラ。少し黙ってろ」

「……」


 アデリンダに言われ、マルムーラは黙り込む。

 アデリンダの声自体には、それほど圧はないが、目力が強かった。


「魔術の凄いところは、近い将来ソフィアが証明してくれます。そうなればソフィアは、赤の国の英雄になっているかもしれませんよ」

「言うじゃないか。オレが知る限り、あの子をそこまで評価してくれる者は、カリストくらいのものだったが……。これからも仲良くしてやってくれ」

「はい」


 セラフィナは、一切の迷いなく答えた。


 セラフィナは、ソフィアに全幅の信頼を寄せていた。

 ソフィアなら赤の国の魔術の認識を変えられると。


「ところで話は変わるが、今回の王闘にリシストラタが出ないというのは本当か?」

「はい、そうです」


 王族は四色祭において、審査や審判を行う立場故に、基本的に競技に参加することが出来ない。

 唯一の例外が王闘である。


 王闘とは、王族の闘いを意味する。

各国から1人、年齢以外の王位継承条件を満たした者を選出し、その国で定められた武器で実力を競う競技だ。

 前回まで白の国からは、リシストラタが出場していた。


「リシス叔母様は、「3回連続で優勝して伝説となったので、ケチが付く前に次世代に後を託そうかと思いまして」、と言っていました」

「そうか……オレの弟のカーネギアが、前回のリベンジに燃えていたのだが残念だ」

「勝ち逃げかよ。これだから白の国は……」

「マルムーラ……。しかしそうなると出場するのはエドブルガか。流石に若すぎると思うが……」

「いえ、私が出場します」


 アデリンダとマルムーラは、目を丸くしてセラフィナを見た。

 2人はセラフィナを、ソフィアと同じタイプの人間だと思っていたのだ。

 実際に、肉体的にはそう大差ない。


「な、何故だ!? 君はどう見ても戦えるような体付きをしていない!」

「けれど王闘に参加できるのは、最低でも10歳以上。エドブルガはまだ9歳ですから」


 セラフィナとエドブルガは、2ヶ月しか歳が離れていない。

 しかしその2ヶ月の間に、ちょうど四色祭があるのだ。


 リシストラタは、セラフィナの――もといモトキの剣を高く評価していた。

 その為、1度くらいはセラフィナに王闘を経験させたかったのだ。


(次回以降だと、私がエドブルガを押しのける理由がないからって……リシス叔母様も強引なのだから)

「ふざけんな! お前みたいな奴が、カーネギア兄と戦うなんて……身の程を知れ!」

「マルムーラ! いや、しかし……君が出るのはあまりにも……」

「そうですね。確かに(わたし)は、力は弱く、体も小さい」


 モトキが表に出ると、2人の事を見据える。


「それを理由に手加減をして負けた、等とは言われたくないので、カーネギア王子には全力で戦うようにお伝えください」

「なっ!」

「だから身の程を――」

「それでは(わたし)この辺で。ごきげんよう」


 そう言ってモトキはその場を後にした。


「啖呵を切ったわね。珍しい」

『マル君の一々セラフィナを馬鹿にした態度が気に入らなかった』

「大人気ない……」

『でも大事なことでもある。セラフィナの見た目に油断されたら、楽に勝てる自信がある。どうせなら本気の相手と戦って楽しみたいんだ』

「まあ、そういう前提で了承したのだし、別に構わないけどね」


 セラフィナが王闘の参加を承諾したのはモトキの為である。

 モトキは、片腕になってからも修練を積み続けてきたが、それを発揮する場がなかったのだ。

 その為、モトキが楽しめなければ、参加する意味がない。


『それにしても赤の国の女性って、一人称が男っぽい人ばかりだな。ソフィアもボクだし』

「私とかあたしは、あまり浸透してないらしいわね」

『これもお国柄か。まあ地球でも、多種多様な一人称がある国は珍しいし――』

「そこのあなた! あなたがセラフィナ・ホワイトボードですわね!」


 2人の独り言を、少女の声が遮った。

 声を掛けられて振り向くと、そこにはセラフィナと同じくらいの年の少女がいた。


「いかにも私がセラフィナ・ホワイトボード。あなたは?」

「わたくしの名前はアンネ! 青の国の姫、アンネリーゼ・エルブルース! 控えめに言って天才魔術師ですわ! だけど今はこう名乗らせてもらいます!」


 アンネリーゼと名乗る少女は、腕を組んで、大きく息を吸った。


「わたくしは、あなたの未来の義妹でしてよ!」


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