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ロシータ:良くも悪くも

両親はグアナトス王国のトナラ村に住む辺境貴族で、5人兄弟の末っ子であるわたしに小さなバラと言う意味を込めロシータと名付けた。


生活は豊かではなかったが、食べていけないほどでもなかった。兄が2人に姉も2人。末っ子なのである程度可愛がられて育った。


5歳ぐらいの時に魔力があることが分かった。それほど珍しいことではなく、長男も魔法を使えたので教えてくれた。しかし、魔力があっても、魔法の才能はなく、まったく使えるようにならなかった。


貴族の末っ子は基本的には両親の決めた相手のもとへ嫁に行く以外の選択肢はないので魔法が使えなくても全く問題がなかったため、その事は1年と経たず忘れ去られた。


その運命が変わったのは9歳になった直後のことだった。


近くの森から魔物が湧いて出て来たのだ。子供たちはみんな家の中にこもっていたので何も直接見てはいないのだが、後から聞いた話では最初にゴブリンがたくさん出て、それを追うようにオークが出たあと、グレート・スパイダーが来たらしい。


運がよかったのは弱い魔物が来て迎え撃つ用意が整った後、強い魔物が出て来たため村内への被害が少なかったことだ。運が悪かったのは迎え撃った長男が死に、父も足を負傷し、武器を持てる男手の多くが命を落としたことだろう。


この事がきっかけで、半数以上の男手が村から失われ、労働力が減り、収入が減ったのと合わせ、戦いで亡くなった家臣や村人への見舞金がかさみ、両親は没落貴族への道を進むこととなった。


もちろん、父は色々と手を尽くし、結局貴族ではなく平民の商人家にだが、姉たちを嫁に出す算段を付ることまで行った。しかし、わたしのことまで手が回らず、結局修道会へ志願者として送られることになった。


幸運なことに修練を重ねることで聖魔法を習得し、15歳の成人前には晴れてシスターとなることがかなった。聖魔法の使い手はケガや病気を癒す力があるので、とても重宝されるのだが、わたしの場合、修練を重ねることで魔力は伸びたのだが、結局ヒール以外の魔法が使えるようにはならなかったので、修道会によりエスタンシアという魔王国にほど近い街へと異動させられてしまったのだ。


問題はエスタンシアの修道院に影響力のある司祭から男女の関係を迫られたことだ。当然、ロシータは関係を拒んだのだが、それを根に持った司祭が、ロシータに迫られたと修道会へ報告、修道会から破門されたのだ。


家にも戻れず修道会にも頼れず、かと言って修道会に属さず勝手に治療を行うと取り締まられてしまうので、残った道は冒険者になる事だけ。幸い成人していたので、登録は問題なく完了し、初級とは言え回復魔法を使える人間が冒険者になる事は珍しいため、ベテランパーティーに迎え入れてもらうことも出来た。


予定外だったのはベテランパーティーが最近発見された古代遺跡の探索に向かったことだった。彼らは破竹の勢いで攻略を進め、途中強力な魔物に出くわすこともあったが、強力な装備で固めたベテランの前衛2名と冷静な観察で敵の弱点を探り急所へ矢を放つハンター、強力なサポート魔法でその三人を攻防ともに支える魔法使いがいれば、大きなケガをする曲面も特になかった。


ロシータを仲間に加えたのは、挑むのが攻略されていない遺跡であることから、何階層あるのか、出現する魔物の強さはどの程度かなど不明な点が多く、かと言って時間をかけすぎると、他のパーティに先を越されるので、多少のけがで街まで戻らなくて済むためである。保険としての回復役なので当然配当は少なくなるが、それでも初心者としては美味しい話だったし、あまりに弱くても足手まといだと言うことで、パワーレベリングまで行ってくれ、レベル1から8にまで一気に上げることまで出来た。


そんなパーティがかなり苦戦を強いられた末にガーゴイルを打ち取ると、それまでなかった階段が出現、ベテランのカンでこれはボスフロアになると判断した結果、休憩を取った後、準備を整え下へと進む。


「何にもいねーな」と、筋肉戦士のガストがぼやく。


「これはこれで不気味だな。思うに、可能性として先のガーゴイルがボスで、このフロアはお宝の保管庫なので魔物も罠もないと言うことか、それとも他のパーティに先を越されたか、どちらかだな」イケメン騎士のリーダーが状況を分析する。


「あら、でもお宝の保管庫にしてはお宝が見当たりませんわ。やっぱり先を越されたんですわよ」魔法使いが残念そうにあたりを魔法の光で照らす。


「そうだな、リュート、前の連中が残した痕跡とか、戦闘の痕とか何でもいいから見つけたら教えてくれ。」


「了解、でも先越されたってのはありえなくないですか?」罠を含め遺跡の探索を任されているハンターのリュートが答える。


「そりゃ、上の階は荒らされてなかったからありえないとは思うが、念の為だ。」


「でも~、魔物も罠もないって楽ですね~♪」リュートは気を抜いているわけではなく、リラックスしないと長時間危険と隣り合わせで探索出来ないのでわざと気負わないようにしているのだが、緊張感を保たなくてはいけない前衛からすると少しイラッと来るテンションのようだ。


新人のロシータに意見を求めるものはおらず、ロシータも不必要に発言はしない。


そうこうするうちに大きな両開きの扉の前に到着、これこそボス部屋だとみんな確信していた。別のパーティに抜かされたとしても魔物がリスポーンしていないことからそれほど時間は経っていないのは明確で、彼らがまだ戦っているなら扉は開かず、ボスを倒すか倒されたら扉が開くはずだという。どちらにせよ、扉の前で待機する理由は特になかったので、そのまま扉を開き中に入る。


入った途端、奥に立っていた石像の胸についていた大きな魔石に明かりがともり、石像が動き出す。


「ゴーレムだ。いつも通りのフォーメーションで行くぞ。リュートは胸の石を狙え。ロシータは扉のそばに待機して、誰か少しでもケガをしたら即座にヒールしてくれ。」


リーダーの冷静で的確な指示のもと、全員が動き出す。予想外の強敵出現にもしっかり対応できるのはやはりグアナトス有数の冒険者パーティである。


かなり格上の敵ではあるが、動きが遅いのでゴーレムの攻撃があたらないよう、前衛の二人がホンロウする。ただ、マジックソードもハンターの矢ですらゴーレムに対しは有効打にはならないようで、戦いは膠着。有利なのはこのまま持久戦に持ち込めれば、通常ゴーレムは燃費が悪いので半日から1日で勝てることぐらいだろう。


そう、背後から予想外の二体目が出現するまでは、そういう戦略だった。

18.12.20修正 ベテランパーティはロシータ抜きで4名であることをわかりやすくしました。

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